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水面下の梟【ヒロアカ】

第17章 森の忍者は夜に狩る



電話を切って、相澤は背もたれに凭れかかり天井を仰ぐ。

「朝、弱いんだよな…」

朝に強い者が、こんな時間に起きるなんて考えられない。声はまだ眠そうだった。本当に起きたばかりなのだろう。
頻繁に遅刻してくるし、やはりそれは確実だ。

だが、なら、合宿での終綴は何だ?

生徒に聞いてみたところ、終綴は部屋の中で起きるのが1番早かったのだという。
寝るのは1番遅かったというのに。
妹の事だと気になるんだねとからかわれたが、否定はしなかった。

​────『暫く親戚関係で用事があって、学校には通えない。仮免には間に合うように帰るよ』

引越し終わったら出るね、と通話終了間際に言っていた。
何故か深く訊いてはいけない気がして、わかったと頷くだけにしてしまったけれど。

訊くだけ無駄だとも思う。
終綴は、私生活に関しては殆ど話さない。
クラスで見ていると社会性もあり友達も多いのだが、プライベートでの付き合いは殆ど無いらしい。人に頼ることも皆無だ。
つまり、ああ見えて人と一線を引いている。

そのような付き合いを好む人がいるのは理解している。自分もその類いだ。
しかしやはり、違和感がある。
証拠はないが、れっきとした。

合宿で襲撃を受けた時、それは強まった。
終綴はクラス随一の腕を持ち、且つ頭の回転も速い。
それに加え、授業で見ている限り、冷静ではあるが手を出すのが早い。戦闘が単に好きなのかもしれない。
しかし、それなのに、どうしてあの時は何も無い場所で蹲っていたのだろうか。

証言によると、彼女は自ら渦中に飛び込んでいったらしい。
だが捻挫した彼女が発見されたのは正規のルートからも大きく外れた場所。
終綴は、「ツギハギの男と出会って逃げていたら足を捻った」と言っていた。

だが脳無を積極的に倒しに行ったのが終綴だし、USJでは全く恐れずに敵の集団にも飛び込んでいる。
あの時はお兄ちゃんが殺されるのが怖くて、と言っていたけれど…
同僚の言葉が脳裏を過ぎる。

​────『いるだろ、内通者』

​───いや…よそう。

壁にかかっている時計を見る。
そろそろ出発しなくては。

「終綴には確認が取れました。…行きましょう、オールマイト」

ネクタイを締めながら、相澤は扉の方へと歩いていった。


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