第16章 削がれた爪
「へー、こいつが終綴の兄貴」
「全然似てない…」
相澤の登場に、好き勝手感想を述べる家族たち。
そんなことないと思うけど?と終綴は笑った。
「ほら、あの人妹想いだから…兄想いの私と、そっくりでしょ?」
ドッ、と笑いが起こる。
確かにそっくりだ、なんて誰かが涙を拭きながら言った。
『現在、警察と共に捜査を進めており────』
そんな校長の言葉を聞きながら、なあ、と青年は問う。
「カリキュラム的に、次は何するんだ」
「え、うぅん…仮免取得だと思うけど」
「仮免?」
「ヒーロー資格のね。
合宿も、その為みたいだったし」
「…雄英には────」
青年が言いかけ、バタンとドアが開かれた。
振り返り、終綴は面倒くさそうに溜息を吐いた。青年も終綴と同じ表情をしている。
「終綴!帰ってたのか!」
「ただいま…」
「待ってたぞ!し─────」
「あーはいはい、あとでね。
ってか、お守りはどうしたの。仕事してよ」
しっしと入ってきた男を追い払う。
仕草は怠そうだが、顔は僅かに緩んでいる。
何だかんだ言ってもやはり家族、終綴は彼のことも大好きなのだろう。
新人はその様子に気付き返事をし、男を連れて部屋から出ていった。