第16章 削がれた爪
一通り会見を見終わり、再び家族団欒。
わいわい、とそれなりに楽しく話していると
『速報が入ってきました。
非常事態です。神野区にて、ヒーローと敵が交戦中です。付近の住民は、直ちに避難してください。繰り返します────』
そんなアナウンスが流れてきた。
え、と終綴は顔をテレビに戻す。
ヒーローと敵の交戦なんて、よくある話だ。
わざわざニュースで速報として取り上げるなど、余程のことがない限り有り得ない。
加えてこのタイミング。
クラスメイトたちが関わっているのではないかという、そんな予感がした。
リモコンを操作し、音量を上げる。
『ここで一旦中継に切り替わります』
『はい、こちら神野区中継です。
まるで悪夢のような光景が広がっています!
突如として神野区が半壊滅状態となってしまいました!
ご覧下さい!現在オールマイト氏が元凶と思われる敵と交戦中です!』
かなりの倍率でズームしているのだろう、手元はブレブレだ。
しかし、敵の姿をカメラはしっかりと捉えていた。
一瞬で理解した。
姿を目にするのは初めてだったけれど、一瞬で。
これは敵連合とヒーローとの戦いで。
ヒーローのトップと、敵のトップのぶつかり合い。
どちらの社会にも、大きく影響の出る戦闘なのだと。
そしてこれには、誰も手出しができない。
「オール・フォー・ワン…」
敵の名前を呟いた。
思わず終綴は立ち上がる。
直接見に行きたい。
彼とは個性が似ているし、戦闘のヒントにもなるかもしれないから。
しかし、青年の腕に、力が籠る。
「行くな。…ここに居てくれ」
なぜ止められたのかはわからなかった。
でも、わかったと頷く。
すとん、と再び同じ場所に腰を下ろした。
ごくり。
その場の全員が固唾を飲んで、その戦闘を見守った。