第16章 削がれた爪
USJ以来、何かあるとは思っていた。
異常ともとれる強さと、戦闘時に鈍く光る冷たい瞳。
実技授業になると重ねられる、鋭い考察。
そしてそれはすぐに笑って誤魔化そうとする。
まるでそれが、
─────出してはならない、彼女の本質のようで。
時折周囲を注意深く見渡しているのにも、何か理由はありそうだ。
しかし、尻尾は掴ませない。
強いて言うならば、あの時─────彼女が廊下で誰かと電話していた時。
確か、HRで体育祭について触れた直後だった。
親しそうな雰囲気で、しかし彼女の纏うそれは普段とは確実に違っていた。
自分に気付いた途端、その空気は消え去ったのだが、それすらも違和感しかない。
そして、「いつものように」笑っていた。
どちらが素なのか。
いや、別に彼女が性格を偽っていたとしても、それは大して問題ではない。
終綴と友達になったつもりはないし、これからも親しくするつもりは無いからだ。
問題なのは、「誰に」電話していたのか。
あの空気感は何なのか。
ゾッとするような冷たい空気だったのを、鮮明に覚えている。
こちらにどうしたのと問いかけてきた時、探るような目付きだったことも。
聞かれて拙い内容だった事は確かである。
あれ以降、怪しい行動は見せなくなったから、あの時は迂闊だった───────油断していたのだろう。
また何か見せないかと思っていても、爆豪は警戒され過ぎていた。
そして1番不思議なのが体育祭─────…決勝戦には、正直終綴が来ると思っていた。
轟の負けを確信していたのではなく、彼女の勝ちを確信していたのだ。
それなのに、──────何だあの呆気ない終わり方は。
最近の授業でもだが、どうしても、USJで見た時の彼女の実力からは手加減されているようにしか思えない。
───あいつは、何がしたい?
聞けば、木椰区で死柄木弔と遭遇した時だって、「偶然」彼女はその直前に帰っていたと言うではないか。
───何か、繋がっている?
死柄木からの殺意もあり、仲間だとは思えないけれど。
何かあると考えるのが自然だ。
───このツギハギ野郎とは、何かあるかもしれねぇけどな。