第16章 削がれた爪
死柄木に返事をする代わりに、質問を投げて寄越した。
「依田終綴を…お前らがそんなに気にしてんのは何でだ?」
ツギハギ男を睨みつける。
しかし、当の本人は爆豪と視線を合わそうとすらしない。
「ワケありかよ」
懲りずに他のメンバーへと問いかける。
しかし、誰も答えない────と、思いきや。
「あらやだっ」
ぶりっ子のようなポーズで、サングラスの男が気持ち悪い声を上げた。
キメェなこのオカマ、と思ったのは内緒である。
「水臭いわよ〜!
さっさと言えばいいのにっ!勿体ぶらずに!!」
「……?」
───勿体ぶらずに?何をだ?
男の言葉の意味がわからず、敵のアジトであることを忘れてポカンとしてしまう。
何も言わない爆豪に、男は追い討ちをかけた。
「彼女のこと、好きなんでしょう?
素直になれないのよねっ!」
きゃっ、などと言っているが、鏡をよく見ろ。
お前は男だ。
続けて「青春ね…学生時代を思い出すわ」。
たらこ唇を爆破してやりたい気持ちで一杯である。
男の言葉は仲間たちにとっても唐突すぎたようで、信死柄木含め敵連合の面々は目を見開いたまま固まった。
しかし、やはりその中にも異端児が1人。
きゃあ、と今度は可愛らしい声が上がった。
「爆豪くん、終綴ちゃんのこと、好きだったんですか!?」
きゃぴきゃぴしているのは、セーラー服を着た同世代らしい女の子。
爆豪に似た髪色をしていた。
「……ンでそうなんだよ……」
これが初めての会話のはずなのに、既にゲンナリする。
こんな奴らを纏めているのかと思うと、爆豪は少しだけ死柄木に同情してしまう。
敵にも事情はあるのだろう。
「私、終綴ちゃんとお友だちなんです!協力してあげます!」
恋バナしたい!
と、女子高生はカウンターに肘をついている。
───お友だち…だと……?
───つーことはやっぱり…