第16章 削がれた爪
「ヤオモモから発信機のヤツもらってそれ辿って、自分らで爆豪の救出に行くって事だよね…?」
わかっているはずなのに、理解したくないのか。
芦戸は、恐る恐る確認した。
ああ、と轟は頷く。
「敵は俺らを殺害対象と言い、爆豪は殺さず攫った…
生かされてるだろうが、殺されないとも言いきれねえ
俺と切島は行く」
───轟って、爆豪とそんなに仲良かったっけ?
───イメージないけど…緑谷みたいなヒーロー気質でもないはずだし…
終綴は首を捻るが、考えてもわからなかった。
「ふ、ふざけるのも大概にしたまえ!!」
「待て飯田、落ち着け」
激昂する飯田を、障子が制した。
さっと出された左腕は、包帯がグルグルと巻かれている。
彼も被害者であるのだと、病室は再び沈黙した。
「切島の何も出来なかった悔しさ、轟の眼前で奪われた悔しさ、そのどちらもよくわかる…俺だって悔しい
だが、これは感情で動いていい話じゃない」
───目の前で奪われたから…か。
───荼毘、確かに轟に喧嘩売ってるようにしか見えなかった。
───知り合いなのかな。
「オールマイトに任せようよ…戦闘許可は解除されてるし」
「青山の言う通りだ…救けられてばかりだった俺には強く言えんが」
「皆、爆豪ちゃんが攫われてショックなのよ…でも冷静になりましょう
どれ程正当な感情であろうと、また戦闘を行うというのなら…
ルールを破るというのなら、
その行為は敵のそれと同じなのよ」
蛙吹の言葉が、全員の心に刺さる。
ヒーローになりたいという言葉に、クラスメイトは全員が頷いた。
それでも、おまえたちは行くのかと。
ルールを破るのかと。
冷たくしかし現実的で重い言葉に、切島は歯を食いしばる。
どうやら、決意は固いようだ。
「お話中ごめんねー、緑谷くんの診察時間なんだが…」
コンコンと、扉がノックされ、白衣の男が入ってくる。
「い…行こか、耳郎とか葉隠の方も気になっし…」
気まずい雰囲気を払うかのように、瀬呂を始め、皆がぞろぞろと出ていった。
「八百万には昨日話した。
行くなら即行…今晩だ
重傷のおめーが動けるのかは知らねぇ、それでも誘ってんのはおめーが1番悔しいと思うからだ…
今晩…病院前で待つ」
───………。
───家に帰ろう。