第16章 削がれた爪
「オールマイトの仰る通りプロに任せるべき案件だろう!!!
俺たち生徒の出ていい舞台ではないんだ馬鹿者!!!!!」
生真面目な委員長は、止めようと必死に声を上げる。
しかし、止められたことでか、切島はヒートアップする。
「んなもんわかってるよ!!
でもさァ、何っも出来なかったんだ!!!
ダチが狙われてるって聞いてさァ!
なんっっも出来なかった、しなかった!!
ここで動けなきゃ俺ァ…ヒーローでも男でもなくなっちまうんだよ」
僅かに、最後の言葉だけが震えていた。
救けたい。
その気持ちが、震わせたのだろうか。
「切島落ち着け、こだわりは良いけどよ今回は…」
「飯田ちゃんが正しいわ」
上鳴と蛙吹も、飯田に続く。
他のクラスメイトたちも、口には出さないだけで、飯田が正しいのだと態度が示していた。
「飯田が正しいよ、でも!!
なァ緑谷!!」
切島もわかってはいるのだろう。
そして、敵のアジトに乗り込むのは、怖いに違いない。
震えた声が、少し泣きそうだ。
「まだ手は届くんだよ!」
右手を緑谷に差し伸べる。
おまえも、来い。
その手は、そう言っていた。