第15章 夜明けの前兆
「ごめんね出久くん、またね」
「トウッ!」
「ネホヒャ」
トガ、トゥワイス、脳無はそれぞれワープゲートの中に入っていく。
しかし、荼毘は「まだ目標が」と入らない。
マジシャンは、そんな荼毘に朗報、と仮面を取り外した。
「アレは走り出すほど嬉しかったみたいなんでプレゼントしてあげよう…俺の悪い癖だよ、マジックの基本でね
モノを見せびらかす時ってのは必ず…
見せたくないモノがある時だぜ?」
べ、と出したマジシャンの舌に乗っていたのは、障子が持っているものと同じような2つのビー玉。
それと同時に、障子の左手からは氷の欠片が飛び出した。
───なるほど、圧縮して閉じ込める個性か…多分あの氷は轟のだろう…
便利だなぁと終綴はやはり冷静だ。
悔しそうに緑谷の顔が歪む。
「そんじゃーお後がよろしいようで」
よし、と不敵に笑う荼毘と共に、マジシャンもゲートへと入っていく。
しかしここで、不測の事態が起きた。
「!?」
───は!?
青の光線が、マジシャンの口を直撃した。
パリンと仮面は割れ、その衝撃でビー玉が2つ、宙に出る。
考える間もなく、3人は走った。
途中で痛みにやられたのか、緑谷は脱落しているが。
障子は1つを掴み取り、
轟は、
あと一歩というところで、それを取られた。
目標を手にした荼毘は、轟を見下ろしニヤリと笑う。
「哀しいなあ、轟焦凍」
うわあああああ、と緑谷はまた走る、走る、走る。
追いつくはずがないのに。
手はもう使えないというのに。
「確認だ、解除しろ」
「っだよ今の…俺のショウが台無しだ!」
悔しそうに呟いたマジシャンは、しかしパチンと指を鳴らす。
パッ
障子の手から出てきたのは常闇で、
荼毘に捕まれていたのは爆豪だった。
「問題なし」
「かっちゃん!!」
緑谷が叫ぶ。
爆豪は、首を掴まれていた。
何かの可能性を考えたのだろうか。
幼馴染の怪我を目の当たりにしたからだろうか。
「来んな、デク」
それだけを言い残し、爆豪は闇へと消えた。
そして荼毘は、終綴が居たはずのスペースにちらりと目を向けた。
「また会おう………向かいに来る」
ワープゲートは、閉ざされた。