第15章 夜明けの前兆
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ブラドキングが通報していたらしい。
ワープゲートが閉ざされてから15分後に、救急や消防、警察が到着した。
結局自分は何もしていないから、それでは駄目だろうとわざと足を捻らせた。
「すみ…ません、ちょっと足、捻っちゃって…」
あはは、と申し訳なさそうに笑う。
状況は一応把握していたが、救助に来た隊員に尋ねてみる。
肩を貸してもらい、そのまま歩いて宿へと向かう。
宿の前で救急車やパトカーが待機しているらしい。
「君以外は皆救出されたよ。
意識不明が15人、重軽傷者12人、無傷は13人、で…行方不明が1人だ」
「ヒーローは?」
「1人が重体、1人行方不明。
君たちの先生は無事だよ」
少し考える。
「その行方不明のヒーローって誰ですか?」
「ああ…ラグドールだったかな」
──やっぱり。
敵連合とオール・フォー・ワンは繋がっている。
それは木椰区での緑谷の発言で明確になったし、間違いないだろう。
そして、個性を考えるに、誰かを「欲しがる」はず。
USJの際に相澤は特別視されていなかったから、恐らく彼はその対象から除外されている。
ブラドキングを狙うならB組を襲撃すれば良かったわけで、同じ理由から彼も除外。
また、わざわざ合宿に来てまでとなるのだから、爆豪だけが目的だとはどうしても思えない。
殺害リストはどう考えても死柄木の個人的な感情で、オール・フォー・ワンの狙いではない。
──死柄木を自由にしているとしても、何かしら彼にも目的はあるはず。
ここで自然と候補に上がるのが、プロヒーローの個性というわけだ。
この合宿所を知っていた時点でプッシーキャッツのことも知られているのはほぼ間違いない。
加えて彼らの中であの男が欲するほどの個性となると、ラグドールではないかと思うわけだ。
──やっぱり、あの脳無を作っているのは奴で間違いなさそうだ。
──平和の象徴を殺すためだろうけど。
──荼毘と死柄木の狙いが正反対とは言え、その標的が私であることに変わりはない。
──死柄木と対立ってことは、伝説と対立することと同義だし、それは避けたいんだけど…
──ま、とりあえず皆に話さなきゃ。
──実家に帰ろう。
救急車の台数と怪我人の数からして、捻挫程度の自分が病院に運ばれることはなさそうだ。
久々に愛しの彼に会える、そんなことを思って。