第15章 夜明けの前兆
トドメを刺さんと、もう一度炎を放つべく掌を脳無の頭部にむける。
これで終わりかと思われたその時、
ガサガサ、近くの草むらが動いた。
振り向きざまに、距離を取る。
おかげで殺し損ねたが、また殺せるだろう。
出てきたのは、またもや敵連合らしき人間だった。
まだ若い、自分と同じくらいの年だろう。
「なんっ──────」
「あ、終綴ちゃんだよね!
私、トガヒミコ!」
距離をとりつつ、終綴は何なのだと困惑した。
──こんなフレンドリーな敵がいるか?
黙って観察するが、どう見ても彼女の纏う雰囲気は敵だ。
「ねぇねぇ、終綴ちゃんには、好きな人いる?
いるよねぇ?そんな顔してる!
その人になりたいよねぇ?殺したいよねぇ?」
──…何だこいつ。
突然敵が自己紹介をしてきたと思ったら、恋バナ(?)を始め、しまいには好きな相手を殺したいと言う。
異常者だ、それ以上の認識はない。
それに、
「ごめん、私は彼を殺したいだなんて思ったことはない」
──彼のために死ぬことならできるけど。
「んなことより、トガちゃんテンション高くねぇか!?何か落ち込むことでもあったのか!?」
「お友達ができたのと、気になる男の子がいたのです」
「それ俺!?
ごめんムリ!!俺も好きだよ」
トガとトゥワイスが仲良く話しているのを、荼毘は呆れたように見ている。
「こいつらはいつもこうなんだ。
緊張しろとは言わないが…終綴の前だぞ」
「いいんじゃない?敵連合が仲良しの集まりだなんて、可愛いところもあるんだね」
「……そっちは、仲良しの集まりじゃないのか?」
「教える義理はない」
睨みつけると、荼毘は哀しそうにそうかと言った。
敵がこんな表情をするとは思っておらず、終綴は少しだけ動揺する。
情でも移ったのか、
「で、雄英の合宿に襲撃まで来て私を探すだなんて…何の用?仕事中に来てくれてもいいのに」
と、終綴は荼毘に問いかけた。