第15章 夜明けの前兆
「さすがだなぁ依田終綴…脳無に勝ったって話、本当だったんだな」
優しそうな口調だが、どこか悪意を感じさせる瞳。
──敵連合の奴か………!!
タイミング的に、それは確実だろう。
拙い、囲まれた。
負けるとは思わないが、1対2。
相手の個性も判らないこの状況では、こちらが劣勢だ。
ただのチンピラとは、訳が違う。
──いや、多分この青い炎がこの男の個性。
「………あんたら、名前は?」
「誰が教えるかよ!トゥワイスだ!」
「荼毘だ」
意外にも正直に教えてくれる。
「じゃあ荼毘、トゥワイス…2人に聞くけど、私はなんで殺されることになってんの?
死柄木弔の指示ってことで合ってる?」
──できることなら、戦いたくない。
──自分の状況も、知っておきたいし。
「さすがだな雄英生…
脳無を半殺しにしたお前が憎いんだと。つまり私怨だ」
終綴の考えが判ったのか、荼毘はクククと笑う。
──よく判んないけど…保険。
きゅ、と拳を握った。
「殺されるのは嫌だけど、誘拐って言うなら着いて行ってもいいよ」
どちらにせよ、相手側の手駒の数とそれぞれの個性、それくらいは知っておきたいところだ。
行ったところで自分が殺されるとは思わないが、油断はしない方がいいだろう。
特に死柄木弔には、触れられた瞬間に死んでしまう。
相手も、こちらには最大の警戒を払っているようだ。
「交渉決裂だな」
荼毘はそう言って、こちらに手のひらを向けるが────
「出てねぇぞ炎!すげぇなお前の個性!」
青い炎は、出てこない。
「………そういえば、お前の個性だったか?
"与奪"って」