第15章 夜明けの前兆
──かっちゃんってことは……爆豪くんか。
様々な理由が思い浮かぶ。
ヘドロ事件。
あの事件で、彼の個性が秘める強さが顕になった。
USJ事件。
あの場で見せた冷静かつ素早い動きによって、彼の才能が強調された。
体育祭。
彼の見せた個性の強さと粗暴さで、世間は僅かに彼を危険視した。
彼らが爆豪を見つけてどうしたいのかは分からない。
しかし────
「見つけたぜ!どこだ!?」
後ろを振り向くと、ビシッと指をさされていた。
全身マスクの、奇妙な男。
矛盾した言葉だが、どうやら自分が標的であることは間違いなさそうだ。
──単独行動しておいて良かった。
ほっと息を吐きつつ、臨戦態勢に入る。
この男も敵連合であると見ていいだろう。
だが、積極的に戦闘に加わっていないところからしても、この男は戦闘要員ではないらしい。
「……狙いは、爆豪くんと私2人だけ?」
懐のスタンガンに手を忍ばせる。
いつでも撃てるよう、スイッチを入れた。
男はそれに気付かない。
「馬鹿かよ、んな簡単に教えるとでも思うか!?攫えって指示なのは爆豪だけだけどな!」
──私を攫うつもりはない…?
「じゃあなんで私を探してたの?」
「殺すリストに入ってたんだよ!お前は殺さねえけどな!」
「殺せないの、間違いじゃなくて?」
「お前殺す用の脳無を一体連れて来たんだ!それもそうだな!」
──脳無を!?
──私とオールマイトが倒した筈じゃあ…
──でも、"改人"って話だったし、作ってるのか。
──こいつらの手元に何体いるんだ!?
──ていうか殺すリストって何!?
──他に誰がいる!?
混乱が終綴を襲う。
ふいに、誰かの気配がした。
飛び退きながら、慌てて振り返る。
ゴオオオオ
一瞬前まで終綴の立っていた場所が、青い炎に包まれていた。