第15章 夜明けの前兆
足音を殺して、素早く森の中を駆ける。
終綴が確認したところ、ガスの充満している場所と、焦げ臭いにおいが強い場所があった。
所々でクラスメイトやB組の生徒もいたが、それは放っておく。
彼らを保護するのでも構わないが、情報が全くない時点でこちらは劣勢。
劣勢なのに守りに入るのはどうか、と終綴は思ってしまう。
まだ、ここで守るべきものすら明確でないのに。
───ガスは…多分有毒だよね。そういうタイプの個性持ちか?
───わかんないけどとにかく、集団で来ていることに間違いない。
───ガスと黒煙は場所が離れてるし、多分、さっきいたのとは別に、少なくともあと2人はいるって事だ。
───それと、多分だけど、一斉に攻撃仕掛けてると思うから…
───だとしたら、1番分かりやすい合図はこの黒煙の方だ。焦げ臭いにおいは、確実にここから来てる。
───周囲に怪しいものがないか、確認してから行こう。
───合図した奴がリーダーとは限らないけど…
───この集団のリーダーは、知っておく必要がある。
敵連合だと彼らは言っていたが、ここに死柄木弔が来ているとも思えない。
彼はオールマイトに固執していたから、オールマイトのいない場所に襲撃を掛けてくるとは考えづらいのだ。
走るのをやめ、足音と気配は殺したままにゆっくりと周囲を歩く。
罠が仕掛けられていないか、敵は潜んでいないか、など。
しかし、めぼしいものは何も見当たらない。
轟音と地鳴りがした。
───!?なんだ!?
音がしたのは森のさらに奥の方。
敵と誰かが対戦しているのだろうか。
ここに来ている教師2人はパワー系ではないし(ブラドキングの方は戦闘を見たことがないので恐らく、ではあるが)、プッシーキャッツもパワー系は虎のみだ。
しかし、虎はスタート地点で会敵しているはず。
そうなると生徒になるが、
───性格と個性から考えて…A組なら、緑谷…かな。
やれやれ、と首を振ったところで、マンダレイからテレパスが届いた。
『A組B組総員────プロヒーロー・イレイザーヘッドの名において、戦闘を許可する!!』
『敵の狙いの1つ判明!!
生徒の"かっちゃん"!!!
戦闘を避けて、なるべく単独では動かないこと!』