第15章 夜明けの前兆
同時に殺気を感じ、前方に跳んだ。
敵らしき姿を確認する。
目で見えるのは2人だが、他にもいると見ていいだろう。
出久も後ろに来ている。
反射で体が動くのかと思うとゾッとするが、それは後だ。
少なくとも今は、「仲間」だから。
敵らしき人物たちは、まさか飛び込んでくるとは思っていなかったらしく、咄嗟に防御態勢をとった。
その隙に終綴は2人の頭上を飛び越え、そして走り抜ける。
ついでに頭を思い切り踏むのは忘れない。
「あっあいつ…!!」
聞き慣れない声が怒っている。
恐らく敵だろう、しかし自分を追ってくる様子はない。
ちらりと振り返ると、ピクシーボブが頭部から血を流して倒れていた。
「俺たちは敵連合…開闢行動隊」
爬虫類のような男が、そう名乗った。
決して大きくはない声だが、終綴の鋭い聴覚はそれを正確に拾う。
同じようにそれを聞き怯える生徒達の前に虎が立ち塞がり、守ろうとしているのが見えた。
それと同時に、戻ってこい、と怒鳴られる。
心配されているのだろう。
しかし、無視して更に奥へと飛ぶように走る。
前ペアの飯田と甲田が、すぐ近くにいた。
「2人とも!!捕まって!」
思い切り手を伸ばす。
甲田は小心者だ。
恐怖で蹲っているように見えた。
──この子たちを、ここに残らせる訳にはいかない!
「!!依田くん!」
飯田が終綴に気付き、甲田と共に手を伸ばす。
両手で2人をそれぞれ掴む。
よし、
終綴はその場に着地すると同時に、2人をヒーローたちの居る方向へと投げ飛ばした。
「お、おい依田くん!?君は何を────!」
「!?」
一緒に戻ると思っていたらしい2人は、飛ばされながら驚いているが、そんなもの知った事ではない。
──ここは、私の領域だから。
──行かなきゃ。
「依田さんっ!!!飯田くんと甲田くんありがとう、
僕洸太くんのところ行ってくる、君は!?」
追いついてきた緑谷の表情は、真剣そのものだ。
終綴が皆のために動いていると、信じて疑わない目だ。
終綴は頷いた。
「みんなの様子を見て宿に誘導する!
あっちなら先生たちもいるだろうし!
…洸太くんのこと、頼んだよ!!!」