第15章 夜明けの前兆
──なんでヒーローたちは気付かない?
終綴は思うも、しかしそれは仕方の無いことだった。
ヒーローたちが鈍いのではなく、終綴が鋭すぎるだけ。
ヒーローたちは平和ボケしていて、自分が警戒しすぎていた。
たったそれだけのことだ。
──確実に、合宿の事を知ってるな、これ。
──狙いは、雄英そのものか、ヒーローか、私か。
ジク、ジクと背中に痛みがやってくる。
拙い。本格的に、拙い。
昨晩より、ずっと明確で、ずっと強い悪意。
この感覚を、終綴は知ってる。
──昼間は、大丈夫だったのに。
──何もなかったというのに、どうして今になって。
──でもとにかく、
──肝試しなんか、やってる余裕はない!
スマホを取り出し、素早く『合宿 何者かと接触可能性』とメールを送った。
ついでに、位置情報も送信する。
必要ないかとも思ったが、念の為だ。
そしてそこまでして、ようやく、緑谷がこちらを心配そうに見つめていることに気が付いた。
「あの、…依田さん?大丈夫?」
険しい表情を見てしまったらしい、と当たりをつける。
終綴は誤魔化すようにして、うん、と頷く。
「大丈夫…だよ」
──そう、「私は」大丈夫。
──何があっても、私は、死なない。
──こんな所で、死ぬ訳にはいかないからね。
へらっと笑う。
そして、
────────焦げ臭いにおいに気付いたのは、緑谷と同時だった。
前方を見ると、木々が燃えていた。
「ッ!!!」