第15章 夜明けの前兆
「あ、緑谷と一緒?
やった、よろしくねっ!!!」
終綴はにこにこ笑う。
怖がる女子もいるが、終綴はそれほど苦手ではないらしい。
いつも楽しそうにしているから、表情の変化は分かりづらいのだが。
「うっうん、よろしくっ……!!」
自分はなんてくじ運が良いのだろうと思いつつ、クラスの男子たちからの視線を甘受する。
無意識のうちにニヤけていたのか、爆豪に「キメェ」と吐き捨てられた。
前ペアの口田と飯田がスタートし、緑谷と終綴は時間が来るまで、待つことにする。
「……………」
「……………」
2人の間に、沈黙が下りた。
隣をちらっと見遣ると、どうしてか終綴は険しい顔をしている。
そういえば、昨晩からはやけに静かだ。
訓練時には騒いでいたものの、それを除けば本人かと疑ってしまうくらい落ち着いている。
授業での戦闘時はいつもこれくらい静かで且つ落ち着いており、先程オールマイトについて聞いてきた時のように鋭くもあるが────今は少なくとも誰とも戦っていないし、鋭い目を見せるのも不自然だ。
なぜだろう。
実は怖いものが苦手だったりするのだろうか。
「あ、あの、依田さん…?」
緑谷が心配する一方、
──なんだ、この空気は。
じわり、終綴の額に汗が滲む。
経験で培った勘が、警鐘を鳴らしていた。
昨晩ふらっと周りを歩いた時から、何かおかしいなとは思っていた。
しかし教師たちに言うのは憚られ、鋭すぎることを知られれば、自分に疑いをもたれてしまうかもしれない。
それだけは避けたかった、それに、ヒーローたちも気付いてくれると思っていたのに。