第15章 夜明けの前兆
「おかしい…?」
不思議そうに首を傾げてみるが、峰田は堰を切ったようにべらべらと喋り始めた。
「雰囲気っつーのかさぁ…なんか、たまに人殺しちまいそうな目ェしてんだよ!
すぐ人の急所狙うし、容赦ねぇしよぉ…」
同い年だとは思えない。
素人だとは思えない。
ヒーロー志望だとは思えない。
そう言いたいのだろう。
「酷いなあ、峰田は。
私を殺し屋か何かだと思ってるわけ?」
「個性把握テストん時は、なんか、スゲー怖ぇ奴だなって…思ったけど…今考えてみれば、USJも、あんな動けんのおかしいだろ!?」
「爆豪や轟だって、強かったし動けてたよ?緑谷だって」
終綴は否定するも、峰田は止まらない。
「木椰区の時だって…なんであのタイミングで予定なんか……おかしいだろーがよぉ!?」
「……………」
「おまえなら、脳無倒せたおまえなら、…USJん時、死柄木を倒せたんじゃねぇのか?
なぁ…依田があの時敵の集団に飛び込んだのは、……あいつが殺されないように守るためなんじゃねぇのか…………!?」
怖いのに変わりはないのだろう、涙がとめどなく流れている。
それなのに、そんなに終綴を怖がっているというのに、この男は、言葉を止めようとしない。
気付いていないフリをして、警察や教師に密告でも何でも、すればいいというのに。
否、思い返せば、期末テストでの態度は普段通りだった。
ということは、彼も演じていたということなのだろうか。見た目に似合わず彼は成績も優秀みたいだし、考えているのかもしれない。
自分はクラス中から信頼を置かれている。そんな生徒が敵かもしれないなんて、混乱を来すだけだ。それを、峰田もわかっているのかもしれない。
もし暴露したところで、それが信じてもらえるかなんて保証は全くないのだから。
自分の日頃の行いを、彼自身も理解しているらしかった。