第15章 夜明けの前兆
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「疼く…疼くぞ……早く行こうぜ…!」
「まだ尚早。
それに、派手なことはしなくていいって言ってなかった?」
「ああ…急にボス面始めやがってな
今回はあくまで狼煙だ
虚ろに塗れた英雄たちが地に堕ちる
その輝かしい未来の為のな」
「ていうか、これ、嫌
可愛くないです」
集団には、共通点がなかった。
仮面をつけた大男。
ガスマスクを着用している学生服。
継ぎ接ぎだらけの青年。
金髪の女子高生。
性別も服装も年齢も、全てがてんでばらばら。
会話も、あまりまとまってはいない。
「裏のデザイナーが設計したんだし、理には適ってるハズだよ」
「そんなこと聞いてないです、可愛くないって話です」
「どうでもいいから早くやらせろ、ワクワクが止まんねえよ」
「黙ってろイカレ野郎共
まだだ…決行は…10人全員揃ってから、だろ?」
継ぎ接ぎの青年がリーダーなのだろうか。
その一声でぴたりと皆が静かになる。
そして、全員が同じ方向に目を向ける。
山の中で、1箇所だけが光っていた。
何かの建物があるらしく、全部屋に明かりが点っている。
そこが、彼らの狙いなのだろうか。
彼らの纏う雰囲気はそれぞれに不穏であり、バサバサバサ、と周囲にいたらしい鳥たちは慌ててそこから去っていく。
さらに、3人が加わった。
「おまたー」
ガタイのいい黒髪サングラス。太い棒状の何かを携えている。武器か何かだろうか。
「仕事…仕事……」
拘束衣を身につけ、涎をだらだらと流している性別不詳の者。顔は分からない。
「…………」
緑色の肌をした、爬虫類顔の男。彼は赤い布切れのようなものを首に巻いており、どこぞのヒーロー殺しを想起させる。
「威勢だけのチンピラをいくら集めたところでリスクが増えるだけだ。
やるなら経験豊富な少数精鋭…
まずは思い知らせろ、てめぇらの平穏は俺たちの掌の上だということを」
青年は続けてぼそりと呟く。
「漸く…この時が来た」