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水面下の梟【ヒロアカ】

第15章 夜明けの前兆



彼らは知名度が高い。

ヒーロー殺しのフォロワーがいるのであれば、戦力も相当なものになるだろう。

──多分、オール・フォー・ワンがバックにいるし。

オールマイトを殺すなんて、普通は思いつかない。
それほどまでに、彼は大きな存在なのだ。
ヒーローにとっても、敵にとっても。
一般市民にとっても。
きっと、この日本という小さな国の中では、最も意味ある存在なのだろう。
最も、その手を望まれている。
死柄木弔は、オール・フォー・ワンの傀儡とまでは言わないまでも、それに近いのではないか。
そんな予感が、終綴にはあった。


「どう思う?」

数秒考えた後、終綴は例の如くどこかに電話をかけた。

『何がだ』

唐突な問いに、電話の向こうの声は呆れたようだ。
主語と目的語を言え、とため息を吐いている。

「私が敵連合だったら、これくらいのタイミングで襲撃かけるんだけど、それは私だけかなと思って」
『────おまえがそう思うなら、それが正しい』
「嬉しいな」
『今、何の時間だ?電話しててもいいのか』
「自由時間じゃないかな。
散歩してるよ」

散歩を、何のためにするのか。
新しい場所に来たとき、終綴は散歩するのが習慣になっているのだが、その意味を向こうの声の主は知っていた。


『…そうか。
余計なことだけはするなよ』
「今の流れでそれ言う!?
普通は心配しない?恋人だよ?」
『心配するとしたら、相手の命だな』
「ひどいなぁ」




『おまえは好きにしていていい。
正しいと思うこと、したいこと…自由にしてろ』





一瞬、呼吸が止まった。
あの用心深く慎重な彼が、これほどのことを言ってくれるとは。
自分はどれだけ、信頼されているのだろう。
どれだけ愛されているのだろう。
こんな何でもないような言葉が、こんなにも、嬉しい。



「ありがとう。
あ、そういえばけ──────」

何か終綴が言いかけたとき。


ジャリ、と足音が聞こえた。


息が止まる。

まさか。

脳裏をよぎるのは、死柄木弔の不気味な手。

狂気の宿った瞳。


──ここで人は殺せない。



ジャリ。



音が、近づいた。

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