第15章 夜明けの前兆
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風呂を出たら、就寝時間までは自由時間。
30分ほどの短い時間だが、それで充分だった。
昨日と同様、素早く風呂を済ませ、動きやすい服装で外に出た。
周囲に広がるは森林。
プッシーキャッツたちの私有地なのだと言っていた。
──だから、安全だとでも?
体育祭では、何もなかった。
それは確かにそうだ。
だが、終綴には、それがヒーローたちの警備の賜物だとはとてもじゃないが思えなかった。
──あれは、襲撃に来なかっただけだ。来れなかったわけじゃない。
それに、
──ヒーロー殺しは捕まったけど、絶対にフォロワーがでてくる。敵連合と繋がっても不自然じゃない。
敵連合とヒーロー殺しが、いかにして繋がったのか。それは判らない。
だが、タイミングを鑑みれば繋がっていると考えるのが普通で、そうであれば、雄英はまた襲撃されることになるだろう。
辺りを見回す。
おかしな点は何も無い。
オールマイトもいない、この合宿中に襲撃でもされたら一溜まりもないと思っていたのだが、さすがに杞憂だったのだろうか。
──私だったら、確実にこのタイミングで仕掛けるけど…
──ま、来ないならいいんだ。
大丈夫か、と安堵し宿舎に戻ろうとするも────
ジクリ
背中が焼かれたような感覚。
僅かではあるが、殺気と悪意。
USJで受けたそれよりも、遥かに明確なものだ。
「!」
振り向くが、誰もいない。
──何だ、今のは。
どこからか、視線を感じる。
なのに、その姿は見えない。
遠くからなのだろうか。
それとも、見えない場所に誰かが潜んでいるのだろうか。
人の気配はない。
ならやはり遠くか。
──気のせいだといいけど…そんなわけないよね。
昼間は感じなかったのに。
なぜ今になって。
今、教師たちはあまり警戒していないのではないか?
だからこそ、警備が手薄なのではないか?
情報漏洩を防ぐと言って、行き先を伝えない、それだけで充分と思っている節が教師たちにはある。
仮免を取得するために個性を強化するのだと言っていた。
それはいい判断だと思う。
だが、そこには穴がある。だって、
仮免取得まで、敵が待ってくれるとは限らないのだから。
そして、ヒーロー社会にヒビを入れるという目的なのであれば、敵連合と結託するのが合理的だ。