第15章 夜明けの前兆
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ガサリ
隣で眠る芦戸の寝返りによる布擦れの音で、終綴は目を覚ました。
やはり、他人と同じ部屋にいると、熟睡できない。
「…………」
昨夜は、B組の女子たちとも集まって恋バナ(?)をした。
誰がかっこいいだとか、誰が誰を好きだとか、そんな話を延々と。
結局、女子の総意として誰がNo.1イケメンになったのかは忘れてしまったけれど、なかなかに楽しかった。
夜遅くまで話していたせいか、布団を敷くとみな直ぐに寝てしまった。
しかし、終綴はそうはいかなくて。
何か物音が僅かにでもするたび、目を覚ましてしまう。
───たしか、今日の起床時刻は5時半だったはず。
スマホで時間を確認する。
まだ、それまで1時間以上もある。
「…起きるか」
筋トレでもしてよう、どうせ寝れないし。
いつもより格段に軽い体を動かしながら、終綴は皆が起きるのを待っていた。
「お早う諸君」
まだ寝惚けていそうな生徒たちの顔を見て、相澤は内心溜息を吐く。
どうせ、みな遅くまで起きていたのだろう。
過ぎたことだし、今は何も言うまい。
しかし、1人だけ妙にシャッキリしている生徒が目立っている。
───朝は弱いんじゃなかったのか?
朝遅刻常習犯の妹に首を傾げる。
枕が変わると寝られないタイプなのだろうか?
性格的に考えて、みなと騒がずに夜早く寝るというのは想像しづらいが。
不思議だ、と思いつつ合宿についての本格的な説明を始める。
「今合宿の目的は全員の個性強化及びそれによる仮免の取得。具体的になりつつある敵意に立ち向かう為の準備だ」
USJでの戦いを、もしくは木椰区での遭遇を思い出しているのだろう。
それぞれの表情が変わった。
───相変わらず、終綴の表情は読めないが。
「じゃ、これ投げてみろ爆豪」
爆豪の投げたボールの飛距離は入学当初とほぼ変わらないことを確かめさせる。
「君らが成長したのはあくまで精神面や技術面。個性そのものはそこまで成長していない、だから───────
今日から君らの個性を伸ばす。
死ぬ程キツイがくれぐれも…死なないように」