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水面下の梟【ヒロアカ】

第15章 夜明けの前兆


***

クラスメイトたちはゆっくりしていたが、したい事があるからと終綴は10分ほどで温泉から抜け出した。
急いでジャージに着替え、こっそりと宿から出る。

見回りだろうか。
おそらくブラドキングだろう、体格のいい男がこちらに向かってくるのが見えた。

気配を殺してさっと距離を取った。
そしてそのまま、ぐるりとあたりを歩く。

​───今日はここらへん散策、明日は宿周辺かな。
​───本当は全部一気にしちゃいたいけど、あまり長く部屋に戻らないと怪しまれるし…

集団生活というのは本当に面倒臭いな、とひとりごちる。

職を同じにする者ならともかく、ただの素人、ただの学生、ヒーローの卵。
安心も油断も、できるはずがなかった。

「これだけして帰ろう」

宿から死角になっている場所に座り、愛用のスタンガンを取り出した。

職業体験の際に脳無と遭遇し、小型化しようと改良を重ねたものだ。
今では、掌に収まる可愛いサイズとなっている。
可愛くないのは、その威力だけ。

自作のため、使用には僅かに不安があった。
だが、試すにも住宅街で撃つわけにはいかないし、自宅に帰るわけにもいかない。
自分で試そうかと思ったこともあったが、終綴とて人間、痛いのは嫌いだ。

だから今まで試していないままだったのだが、ここなら大丈夫だ。
木の1本くらい焼いてしまっても、問題ないだろう。

もう一度宿の方を見て、誰もいないことを確かめる。

バチバチッ

発射と同時に光が走り、それから木が黒焦げになった。
黒の物体はそこから崩れ落ち、灰へと化す。

はぁ、と溜息が漏れた。

​───やっぱり自分で作ると威力が落ちるな。
​───プロに頼むのは癪だけど…

納得しないままポケットに仕舞い込む。

さてと。

「急いで部屋に戻らなくちゃ」



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