第2章 はじめまして
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「相澤くんのウソつき!」
相澤が物陰に隠れた瞬間、オールマイトが茶化した。
突然のことだったのにも関わらず、相澤は動じずに言葉を返す。
「オールマイトさん…見てたんですね…暇なんですか?」
「合理的虚偽て!!エイプリルフールは1週間前に終わってるぜ。
君は去年の一年生…一クラス全員除籍処分にしてる。
見込みゼロと判断すれば迷わず切り捨てる…
そんな男が前言撤回っ!
それってさ!
君もあの子に可能性を感じたからだろう!?」
どこぞの名探偵のようにビシッとゆびを指してくるオールマイト。
しかし、相澤はキミも、との言葉だけに反応を示した。
「ずいぶんと肩入れしてるんですね…?先生としてどうなんですかそれは…?
ゼロではなかった、それだけです。
見込みがない者はいつでも切り捨てます。
半端に夢を追わせる事ほど残酷なものはない」
淡々と持論を披露する相澤。
なるほどこれが相澤なりの優しさなのかと納得する一方────見込みと言えばさ、声をかけて相澤を引き止める。
「彼女は?君の妹だって話だけど。圧倒的なまでの1位だったね」
「…実力がありすぎて、怖いくらいですね。今の時点で、完成されすぎている」
「入試だけでも断トツだったもんね」
ある意味では、筆記試験も断トツ(?)だったのだが。
実技では、40名ほどのグループに分かれ、それぞれの訓練場でロボを倒す点数制のものだった。
つまり、その点数と筆記の合計得点で、上の者から合格していくというシステム。
毎年、それぞれのグループからほぼ均等に合格者が出るのだが──終綴のところだけ、彼女1人しか合格は出なかった。
それ程までに、圧倒的だった。
それが何を意味するか。
そう、────
「…今の個性把握テストで、彼女は本気を出していませんでした。入試の時ほどの、気迫…いや、やる気を感じない。必死に何かを抑えているように見えましたね」
彼女以外、皆ゼロポイントだったのである。
あの爆豪勝己でさえ、77ポイントだったのに対し。
終綴はというと、145ポイント。
ほぼ2倍近い得点である。
そして、なぜ彼女と同じ試験場だった生徒たちは0ポイントだったのか。
その理由は、簡単だ。
皆、───どうしてか、動かなかったからだ。
試験の最中だけ。