第2章 はじめまして
勝手に想像して勝手に拗ねていると、相澤が2枚の紙を渡してきた。
緑谷にも渡せ、と言ってくる。
「んへ?」
「ばあさんのとこ行ってこい」
そこでようやく思い出す。
──そっか、確か雄英にはリカバリーガールがいたっけ。
自分が保健室に行く必要性は見い出せなかったが、素直に従っておくことにした。
「デクくん!行こ!」
「はぇぁ!?…あっ、うん!」
終綴が名前を呼ぶと緑谷は一瞬、肩を震わせたがすぐにこちらに走ってきた。
そして並んですぐ、緑谷が口をもごもごさせていることに気づいた。
何か言いたいことでもあるのだろうか。
「どうしたの?」
自分とほぼ同じ高さにある童顔を覗き込むと、緑谷は顔を真っ赤にした。
──熟した苺を潰したみたい。
なぜ潰す必要があったのか。
判らないが、終綴はそう思った。
まさか自分が潰された苺に例えられているとはつゆ知らず、緑谷はそんな色のまま律儀に返事をする。
「いっいやっ、その…僕、デクじゃなくて、出久って言うんだけど、かっちゃんが…」
「ふーん、爆豪くんのつけたあだ名だったのかぁ。……じゃあ、なんて呼べばいい?」
首を傾げると、緑谷は顔を更に真っ赤にした。
──血色、良いなぁ。
流石に例えようがなかったのか、それだけに留まる終綴。
「はいやっ、その、僕は何でもっ」
「…じゃあ、い…………緑谷で。私のことは依田さんって呼んでね!」
出久と言いそうになり、緑谷と言い直す。
その様子には違和感を覚えたが、緑谷はそれよりも気になっていたことがあった。
「う、うん、……あの、聞いてもいい?」
「何を?」
いいよとは言わず、その内容だけを促す終綴。
内容によっては答えられないと言うようだ。
「えと、その………なんで、マスク付けてるの?体育のときマスク付けるのってしんどくないかなって」
それでも1位をとる終綴は凄いものなのだが。
終綴は何だそんな事、と笑った。
「花粉症なんだ、私」
「あ、そうなんだ」
ナルホド。
そう言って緑谷は納得した。
なんだ本当に「そんなこと」だな、と気にしたことを恥ずかしく思いつつ。