第14章 欲しがりと少年
バスが出発して、1時間くらいしただろうか。
降りろと相澤に促され、全員が外に出る。
しかし、
───何も無いけど。
サービスエリアだと思っていたが、そうでもないらしい。
周囲に建物など1つもない。
B組の乗っているはずのバスは見当たらない。
休憩というなら、彼らも同じ場所でというのが普通ではないのだろうか。
何をするつもりだろうか?
様子を伺っていると、見たことのある顔がそこにはあった。
「よーーーーうイレイザー!!」
───あ。
───プロヒーローの。
「ご無沙汰してます」
相澤が頭を下げる。
「煌めく眼でロックオン!」
「キュートにキャットにスティンガー!」
「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」
赤みがかった茶髪と、栗色の髪の女性コンビ。
2人は色違いのコスチュームを身に纏い、それぞれ両手に猫の手のようなものを着けている。
───あと2人、居たはずだけど…
キョロキョロと当たりを見回す。
───ここには来てないのか。
直接目にしたのは初めてだが、彼女たちの存在は知っていた。
「あんたらの宿泊施設はあの山の麓ね?
私有地につき、個性の使用は自由だよ!」
言うが早いか、栗色の髪の女性─────ピクシーボブがその場にしゃがみ、そこから地面が崩れ始める。
バスに乗って逃げようとしていた生徒達に「悪いね」と声をかけるのは担任である相澤だ。
「合宿はもう、始まってる」
───……なるほど
土砂に呑まれる。
「………うわ、」
───汚っ、
終綴は顔を顰めたが、どうする事もできず。
クラスメイトたちと共に、崖下へと落ちていった。