第2章 はじめまして
そして無事全種目が終わり、成績発表。
皆が固唾を飲んで待つ中、終綴はぼんやりとしていた。
──1位、取れてたらいいなぁ。
手加減でもしていたのか、どの種目でも好成績をたたき出していた割には気合いのない願い。
そんな様子に、爆豪は更に苛立っていた。
「んじゃ、パパっと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。
口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する」
相澤はそう言って、映像が宙に映しだされた。
「ちなみに除籍はウソな」
さらっと告げられた言葉に、クラス中──否、主に緑谷周辺がどよめく。
相澤の言葉が聞こえていたのか、オールマイトがホッとしたのが空気で感じ取れた。
緑谷に特別な思い入れでもあるのだろうか。
それとも、除籍処分の生徒を出すのが辛かっただけ?
──でも、たったそれだけで「こっそり」見に来たりするのかな。
オールマイトの態度に違和感を抱きつつも、終綴はクラスメイトの会話に耳を傾ける。
「あんなのウソに決まってるじゃない…」
とポニーテールの少女が呆れているが、果たしてこれは本当にウソ、だったのだろうか。
生憎、終綴には本気のように思えたが──別段、話す必要性も感じず黙っておく。
そんな会話をぼんやりと聞きながら、終綴は自分の順位を確認した。
「…あ」
1位 依田終綴
2位 八百万百
3位 轟焦凍
4位 爆豪勝己
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堂々の1位だった。
点数は表示されていないから、どのくらいの点差で自分が1番だったのかは判らない。
だが、なるほどねぇと終綴は納得していた。
──ま、そんなもんだよね…でも1位とったし。報告したら褒めて貰えるかな、喜んでくれるかな!?
1位を取ったことよりも、家族に褒めてもらえた方が、終綴にとっては嬉しい。
恋人のことを想う。
家族も思い出す。
しかし想像できるのは、──「アンタなら当然でしょ」という苦笑のみ。
恋人の彼に至っては、そうかと頷くくらいだろう。何の反応も示さない気がしてならない。
──くっそぉ。手ぇ痛いの我慢したけど、絶対褒めてはくれないよねー…