第2章 はじめまして
そんなやりとりを思い出していると、50m走が始まった。
2人ずつで走るようにとだけ伝え、相澤は離れた場所に立つ。
誰と誰が走るか、入学初日のため適当に組まれると思われたが──
「オイ爆発女!テメーは俺と組めや!
負かし殺したる!!」
「んー…やだ!」
「ンだとコラ!!さっさと俺と走れや!!」
「やーだー!!私はこの人と走るの!」
終綴はめでたい髪色をした男子生徒を指さした。
彼は一瞬だけ驚いた顔をしていたが、おお、と頷いている。
──絶対何のことかわかってないよね…
緑谷は思うも、しかし先程のボール投げによる個性被りを気にしているのか、爆豪は終綴に突っかかっている。
終綴は至って普通に接しているが、それが異常にしか映らない。
──かっちゃんのこと、怖くないのかな…
緑谷は不思議に思うが、そういう人もいるのだろうと思い直す。
…人当たりの良い笑みのまま爆豪の頼み(命令?)を断っていることにも驚きなのだけれど。
『スタート』
無機質な機械音が始めを言い渡す。
当然のように紅白頭の男子生徒と組んだ終綴は、──やはり爆豪と同じ個性で勢いよく飛び出した。
おおぉ、と観客は感嘆を漏らした。
それもその筈、──読み上げられた記録は、爆豪よりも速いものだったのだから。
──よ、4'01って…クラスで2番じゃないか!?
緑谷の頭は混乱を迎えた。
まだ2つの種目しか見ていないが、彼女の方が1枚上なのは何となく判る。
幼少期から、天才だと持て囃されていた爆豪。
そんな彼を、いとも容易く───…
──雄英ってすごいなぁ…
ゴールした終綴は、自分の手のひらを見つめている。
彼女に疲れた様子は見られない。
「てんめェ…!俺に勝ってんじゃねえよ!」
結局終綴とは組めず先に走り終えていた爆豪が、終綴に掴みかからんとする勢いで彼女に詰め寄る。
しかし、終綴はやはり怯えずにあははと笑った。
「爆豪くんって戦闘狂?私の家族にも似た人がいるよ!!!」
会わせてあげたいな、と終綴は笑った。
負けたら楽しそうにもう一回をせがむんだよねぇ、と続ける。
「俺は楽しそうになんかしてねぇ!死ねや!」
爆豪は騒ぐが、終綴はやはりにこにこ笑っていた。