• テキストサイズ

夢繰り屋 凛 第五章

第6章 お母さん。


気が付いた世界は…真っ白だった。

何処にも何にも無い。

真っ白の世界。

こんな夢は初めて。

…えっと…。
どうしたら…。

一歩踏み出そうとした時、遥か彼方に
何かが見えた。

…??人?翔太君かな?

そして私は歩き出した。

何も無い真っ白な世界、そこにポツンと
塞ぎこみ、座り込んだ彼が居た。

「翔太君?」

話しかけた私を見上げた彼は…
みるみる幼くなっていった。

…!!!

ようやく歩けるようになったばかりの幼い子。
今にもこけそうな足取り。

よいしょっと立ち上がると、両手を広げて、
ヨチヨチと私に近づいてきた。

…か…か…可愛い!!!

幼い『彼』は、私の足にしがみ付き、
可愛い笑顔で、

「ママ。」

と言った…。

…えっ??

「ママ。」

そう言って離れない。

「翔太君。私、ママじゃないよ?」

何回伝えても、彼には伝わらなかった。

いくら幼くても、母親かそうじゃないかくらい
分かるんじゃないのかなぁ…

そう思っていた私は、彼に母親の
記憶が全くない事を思い出した。

(そうか、翔太君には、『違うかも』って事も
 理解出来ないんや。)

物心付く前から、会った事も見た事もない人。
写真くらいは見てるだろうけど、きっと
想像すら出来なかったんやろう。

…困ったな…どうしたら。
…何をしたらいいんやろう…。

夢繰り屋発足以来、初めてのケースだった。

とりあえず、足にしがみ付いている彼を
なだめなきゃ…やな。

そう思い、彼を抱き上げた。

「ママ。」

相変わらず、ママしか言わない。
…ママしか言えないくらい幼いのか…。

「ママじゃないよ。」

言っても分からない。

ママ…ママ…ママ…。

「はぁ~。どうしよ。」

半ば諦めモードの私は、

「はいはい。ママですよ。」

と彼につぶやいた。


その途端、真っ白だった世界が…色を持ち、
彼が過ごしたと思われる街並みに変わった…。

その中に幼い彼を抱いた私は佇んでいた。



/ 11ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp