第4章 家庭の事情。
「凛ちゃん。ごめん。それはちょっと…。」
翔太君に断られてしまった。
「子供の時からのツレやし、自分でも内容分からん夢を、
浩二に見られるのは…なんか恥ずかしい…
みたいな…。弱みを見せてまうような…。」
…そんなもんなんか。
気心知れた相手の方が良さそうやのに…
「それに、生い立ちとか、昔の事に関わる事やったら…。
ちょっと…複雑なトコやん…。」
…??
そして、彼は自分の生い立ちを教えてくれた。
翔太君には『お母さん』の記憶が全くない。
幼い彼を置いて、母親は男と出て行ってしまい、
それ以来、父親との二人暮らし。
でも、二年前に父親が再婚、
突然『母親』と『弟』が出来た。
「正直、俺にはもう、母親が必要って年でもない…。
まあ、家族が増えるって、大変やけど
いい事なんやと思うし…。
何より…、親父が嬉しそうなんだよ。」
「ただ…。」
『母親』は普通に優しく、小学生の『弟』は
普通に可愛く…思うような気がする…と…
府に落ちない事を言った。
「なぁ…母親ってのに、皆どうやって接してるん?
弟って、どうやって可愛がってあげるもんなん?」
…そんな事…考えた事もなかった。
百人居れば、百通りの人生がある。
複雑な生い立ちを抱えている人もいるだろう。
そんな当たり前の事に、改めて気付かされていた。
私も浩二君も答えれなかった。
「そんな事を考え始めてから、夢を見るように
なった感じなんよなぁ…。夢の中でも
悩んでるんやろか…俺ってば。」
…黙ってしまった私たちを気に掛けたのか、
翔太君は笑って見せた。
「分かった。いいよ。私、見てくるから。」
…そんな切ない笑顔見たら、ほっとけなくなるよ。
浩二君は、心配そうな…
でもどこか安心したような…
複雑な顔をしていた。