第1章 救出
「……やっぱり離さないか。」
と呟いた時ペルセポネの華奢な腕からは想像できないほどの力が一気に抜け、解放された。
「っ!もしかして聞こえてる?」
返ってきたのは可愛らしい寝息だけだった。
「全く…かわいいことしてくれるじゃない。」
数回頭を撫で、起こさないようにゆっくりとお姫様抱っこをする。
エレベーターへ辿りつく前にペインとパニックが植物に縛り上げられているのを見て「お仕置きの必要は無いな」と判断した。
正直今はペルセポネのことしか頭にない。
ただでさえ半年しかいられない妻が"今"こうして自分の目の前にいる。この時を無駄にしたくない。
1分1秒が惜しい。
きっと無理言ってゼウスに掛け合ったのだろう。
自分で言うのもあれだが、ワンダーボーイのことがあったにも関わらずよく許したな…。
チーン♪と到着音が鳴り扉が開いた瞬間ベッドへ直行する。
本来は仕事疲れを緩和させるためだけに作った空間だが、結婚してからはペルセポネと一緒に寝る部屋になった。例え二人の寝相がどんなに悪くても、落ちないぐらいスペースがあるベッド。
元々大きめに作らせて良かった。
自分の手からこぼれ落ちないように細心の注意を払って、そっとベッドに降ろす。
一緒に横になり頭を撫で続けた。
ふと彼女の口の端から少しよだれが出ていることに気付く。
なんて愛おしいんだ…。
この顔を見て『だらしない』と思えるか?
自分だけ見せる『無防備』な顔…。
そのままにして起きた時の反応を見るのも好きだが、
テラテラと光るモノがひどく扇情的に見え、親指で拭い舐めた。
あぁ…この子の味がする…。
ゾクッ…と衝撃が背筋をかける。
彼女から出たモノだから彼女の味がするのは当たり前。
だからこそ"愛妻が目の前にいる事実"を確認せずにはいられない。
この柔らかいぷにっとした唇も、すべすべの頬も、細い首筋も、指どおり滑らかな髪も全て"君"だ。
1つ1つの感触を思い出すかのように手を這わせる。
一日中起きなくてもずっとこうしていられる。
このままずっと触っていたい…。