第2章 出会い
ドアをそっと開け外の様子を確認すると、太った赤い悪魔と痩せ細った青い悪魔がなぜか慌てふためいている。さっきの物音は彼らの身長の倍はあるお盆がひっくり返った音らしい。周りには果物がそこかしこに散らばっている。
「何か手伝いましょうか?」
静かに閉めながら声をかけるコレー。こちらの存在に気付いた悪魔たちはより慌てた様子で果物を集めていた。
「べ、べつにオイラ達盗み聞きなんかしてないですよ!?」
「そうそう!ボスが連れてきた女神を盗み見ようだなんてこれっぽっちも思ってないですからね〜…へへっ!」
ボス…ということは、ハデス様の部下にあたる方々ですね。まずはご挨拶しなくては。2人の前に立ち、ゆっくりと膝を折って告げる。
「デメテルの娘、コレーと申します。お名前を伺っても?」
お咎めなし…?とでも言いたげに互いに顔を見合わせながら、
「ペイン」
「パニック」
と答える。
「ではペイン、パニック、果物をそちらのお盆に戻せばいいのですか?」
と言うが否やテキパキと果物を集め始めた。ブドウやカリン、イチジクなど種類が豊富である。地面に手をかざし、柔らかい葉がなる植物を生み出しひとつひとつ丁寧に拭き取りお盆に並べていく。中には食べかけ状態のものもあり、彼らが食べていたのではないかと推測する。それらも丁寧に拭き取りペイン、パニックの前に差し出す。
「どうぞ♪幸い可食部分は地面に当たっていなかったのでまだ食べられますよ♪」
「えっ、でも…」
バツが悪そうに受け取るのを躊躇している。その様子を見たコレーは柔らかな笑みを浮かべながら2人に近付き、
「ハデス様にはナイショですよ(ボソッ)」
と告げた。先程まで緊張していた2人だったが、表情が緩くなり食べかけの果物を掴み夢中で食べ始めた。