第2章 出会い
ニンフ達に囁かれ、今まで抱いてこなかった感情を胸に今日もまた花を摘む。
常に心臓がもやもやしている感覚があるが、不思議と嫌ではない。
ふと顔を上げると一輪の花を視界に捉えた。
咄嗟に駆け出し前傾姿勢でまじまじと眺める。
重たそうな花冠をしっかりと支える茎。
枯れる様子を見せない瑞々しさで、生命力に溢れている。
今まで見たこともない立派な水仙だった。
「はぁ…///」
言葉よりもため息が出るほどの美しさ。自然と頬が緩み、見惚れてしまった。
しばらくすると表情を曇らせて
「わたくしが生み出した子じゃない…一体誰が…?」
と呟く。
突然地の底からゴゴゴゴと地響きが鳴り、音が大きくなるに連れ揺れも激しくなった。バランスを崩しその場に倒れてしまうコレー。
地面が2つに割れバサバサとなにかが羽ばたく音が響き渡る。
「え…」
地下から出てきたのは黒い馬車に乗った神だった。
太陽の逆光でよく見えないが、自分の倍もある背に青々と燃える髪。もしかして…
「きゃっ!」
コウモリのような大きい羽が生えた黒い馬が風を切り、身体が浮く。
いつの間にか"彼"の腕の中にいた。
確信はないが、彼女は直感で"ハデス"だと認識する。
冥界に着くまで心臓がバクバクとうるさく鳴り響いていることと顔がとても熱いことだけ鮮明に覚えていた。