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【名探偵コナン】幸せを願う

第3章 様々な別れ


『コナンくんに怪我はなかった?』
「な、ないよ!降谷さんが守ってくたから!」
『そう、よかった』

きつく握られた手を解きながら自然と頬が上がった。無事でよかったと告げれば青い瞳は驚きで目一杯開かれ、涙が溜まるのがわかる。慌てたように俯いたコナンは南海が握っていない手でゴシゴシと目元を擦った。

「…なんで」

俯いたまま発せられた三文字にコナンの疑問が全て込められていた。

『私は貴方を責めない、絶対に。あの人の正義を信じてるし尊敬しているの。それに彼は未来の日本を担う子供を守ったんだもの、怒る理由もないでしょう』
「もしかして南海さん…知ってるの?」
『彼の所属のことなら結構前から知っているわ』

本人から聞いたわけではないけれど女を舐めてもらっては困ると笑うとコナンは頬を引き攣らせ、灰原はその通りだわと頷いた。

溜めていたものを吐き出せたからかコナンは多少の罪悪が覗くものの晴れやかな顔をしている。それを見た灰原が口角を上げて腕を組んだ。

「終わったかしら?」
「不完全燃焼だけどな」
『ふふ』

がしがしと両手で頭を掻くコナンに我慢できずに笑みを零すと、すっと笑みを消した緑の瞳が南海を射抜く。

「このままでいいの?記憶喪失なんてそんなに詳しくないけれど、それでも貴女が近くにいるのといないのとでは大分違うと思うわよ」
『ありがとう、でもいいの。彼が幸せならそれでいい』

にこりと笑う南海の瞳はそれ以上追及しないでくれと語っている。
悲しみを押し殺し、可能性を断ち切った、ただ愛した男の幸せを願う女がそこにいた。

コナンも灰原もそれ以上の言葉が紡げずにいた。奥歯を噛み締め、この数か月考えてきた全てをジリジリと喉を焼くような痛みと共に飲み込んだ。
それが怒りか哀れみか、将又別の感情なのか、本人以外が知ることはなかった。




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