第3章 様々な別れ
どうしたの?と屈んで尋ねると、途端に二人の眉が寄せられた。
「どうしたじゃないわよ!」
「あむ…降谷さんに婚約者って、それでいいのかよ!?」
『…私が彼の運命じゃなかった、それだけのことよ』
逃がさないとばかりに両腕を小さな紅葉に握られながら事の詳細を話せと詰め寄る二人に苦笑しつつそう告げれば、”そうじゃない!”と声を張り上げた灰原が握る手に更に力を込める。その隣で何かに堪えるようにしていたコナンが頭を下げた。
「ごめんなさい!」
『え、ちょっ、え!?』
道の往来で小学生に頭を下げさせる大人の図が出来上がっていた。慌てて彼の脇に手を入れ抱き上げると一部始終を見守っていた灰原が大袈裟な程大きく溜息を吐いた。
「はあ。落ち着いて話せる場所はないかしら?」
『私の家でもいいかな?』
「ええ。…あなたもいつまで女性の胸に顔埋めてるつもり?」
「っごめん!」
にやりと笑う彼女に指摘され過剰なまでに反応したコナンに相変わらず大人びているなと思いつつ暴れる体を下ろす。俯いているが晒されている耳は見事なまでに真っ赤に染まっていて、思わず吹き出すと連られるように灰原も吹き出した。
『(こんなに笑うのいつぶりかなぁ)』
久し振りに声を出して笑えたと感謝を込めて二人の頭を一撫でして立ち上がり、口元に手を添えてくすくすと笑う灰原と真っ赤な顔でジトリと睨むコナン、それぞれと手を繋いで見慣れた道を進むと部屋に着く頃には三人の緊張は大分解れていた。
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