第15章 運命の番(過去編)2.5
もしも、ここで会わせていたら…二人はここまですれ違うことはなかったのだろうか。
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なるべく牽制していたつもりだ。学校の彼女を独占するのは無理だが、理由を付けて家庭教師のようなこともしたし。どこかへ遊びに行ったりともした。手を繋いだら兄妹に見えるかも知れないと可愛らしくおどけたように俺へ伝えて微笑むから、この子は俺が何がなんでも護らなければと思った。
思っていたのだ。公安へと決まるまでは。だが彼女と連絡を取っていたら組織に気付かれて危険な目に合うのは目に見えていた。警察官になりたかった。漸く夢が叶った。嬉しかった。だが…愛する春枝を手放すなんて考えられなかったのだ。ボロボロと涙が溢れる。嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だっっ!!どうして、なんで!!そう春枝と撮った写真を見下ろして、ぐしゃりと握り潰した。面と向かって会えない、嫌いだとは言えず連絡をたった。このまま俺を嫌ってくれたら楽なのに…春枝はきっと俺の気持ちを簡単に理解してくれるのだろうなとまた溢れる涙を必死に拭う。どうか、彼女が笑顔で住み良い世界を俺が、日本を守るのだ。
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数年経って、春枝は成人を迎えただろうと思う。俺は彼女の成人式に参加したかった。大きな花束を春枝へと贈り、ありがとう零さんと喜んで欲しかった。それが出来ないというのは本当に辛い。爆発に巻き込まれたというのも聞くし、内心気が気じゃなかったりする。その爆発事件もありマンションを変えて、どこか雲隠れしてしまった春枝は本当にどこへ行ってしまったのか。
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その数週間経った日の事だ、スコッチがNOCだと組織にバレた。なんで、どうして!?どこに行ったか分からない、ただ酷く嫌な予感がしたのだ。ライがスコッチを追って走って行ったのを見たといった組織の人間もいて、その情報を頼りに行きそうな場所を手当り次第に探して走る。スコッチ、どうか…まだ早まらないでくれ!頼む!そう俺は駆け抜けた。
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「ライっ!なぜ、貴様が!スコッチはどこに行ったんですか!」
「……黒い大型バイクに連れ去られた」
「はっ?」
「体格は女、だがあの運転技術は組織の人間だろう…雰囲気はベルモットと似ていたが、別人だ」
「それを信じろというんですか」
「信じる信じないは君次第だ…だがあれはただただ凄かった」