第15章 運命の番(過去編)2.5
緑川side。
突き放した運命が、絶体絶命の俺を助ける時にまた再会出来るなんて誰が想像出来ただろうか。
ーーー。
バーボンとライが会う数分前の出来事。いきなりバイクで颯爽と現れた彼女は、誰がどう見ても組織の人間かと思った。不味い、不味い、不味い。なんとかスマホのデータを壊さないと、俺が生きていたら公安に、ゼロに迷惑がかかってしまう。恐怖で足に力が入らない、だがなんとかこの場を凌ぐことを考える。逃げられないと分かっているなら、この女を殺すか拳銃を奪うーー…そのつもりだった。ふわりと香るのは懐かしくも忘れる訳がない、あの子の匂い。
「乗って」
「いや、まっ…」
「早くっ!」
「ひっ、は…はいっ!」
怒りが込められた声にビクリと肩を浮かせてしまった。余りのヘルメットを手渡され、バイクに跨る俺はどこを持てば良いのかが分からない。αの匂いとあの子の匂いに…こんな状況なのにドキドキしてしまった。遠慮がちに彼女の服を掴む、すると苛立つようにこちらを振り向かれフルフェイス越しの視線に熱が上がった。そして無言に、俺の手首を掴み彼女の腰へと強引に絡ませられる。先程よりも匂いが感じられてクラクラする、柔らかい女性らしい華奢な体、重量のある豊満な下乳が不可抗力に当たってしまって申し訳なさが募る一方だ。そんなつもりはないというのに、体は変に反応してしまうのが悔しかった。
「振り落とされないようにしっかり掴まって下さい…今度は私がお兄ちゃんを助けます」
「えっ…」
ぽつりと零した言葉は聞き取れなかった。次に来るのは疾走感、バイクのエンジン音と共に急降下して落ちる大型バイクに舌を噛むかと思った。叫び声を上げなかった俺は凄いと誰か褒めて欲しいくらいである。恥ずかしさはどこへやら必死に彼女の腰へ抱き着いて、背中越しに顔をくっつける。目をつぶっていた俺は気付かなった。ライがそこまで追っていたという事にだ、ただ俺はこの恐怖が早く終わることを切に願うばかりであった。
ーーー。
運転技術に舌を巻く。全ての組織の人間を全員撒いて、明るい街へ出ていたと思えばいつの間にかどこか分からない地下駐車場へと来ていた。彼女が組織の人間だとは考えられないが、つい身構えて警戒してしまう。フルフェイスを脱いだ彼女はーー…やはり誰よりも綺麗になっていた。安心させるような穏やかな笑みに思い出すのはあの出来事だ。