第15章 運命の番(過去編)2.5
降谷side。
α性だと思っていた俺が、Ω性で初めてヒートになり助けてくれた相手が運命だったなんて誰が想像出来ただろうか。
ーーー。
「降谷は絶対αだよなー…」
「うんうん!絶対そうだよ!だって成績はいつも一番だし、運動もなんだって出来るもんね!」
小学生の頃から、俺はなんでも出来た。だからバース診断も中身を確認していなかったのだ。俺はα性だと思っていたし、周りも皆疑わなかった。ただ一人景光を除いてだ。
あいつはΩだった。人よりヒートが激しい場合があり、三ヶ月に一度は一週間の間休む時がある。しかし今日はヒートが終わってまだ一ヶ月少しだ。なのにまた急に休んだ景光に一体なにがあったんだと考える。まさか、妙なα性になにかされたんじゃ?と思うと、景光に直接聞かないと気になって仕方ない。だがα性である俺が景光に関わっては相手が困るだろうと思い、また学校へ来た時にでも尋ねようと思った。
景光がいないとやはりつまらない…いつもより早めに学校へ向かう俺は、いきなりなんの前触れもなくドクンドクンと体が熱を上げた。なんだこれは、どうして、俺はα性で…だからっ
不味い、早くなんとかしないと…でも景光のように薬など持ち合わせていない。なぜなら俺はα性だからだ、それじゃあなぜだ?後天性のΩだったのか?いや…違う。分かっている、これはヒートだ。だがいきなり受け入れるわけがないだろう!踏ん張ることすら出来ず、ズルズルと座り込んでしまう。脚に力が入らない、体がダルい…熱っぽく目の前が霞む。助けを求めたくても、ヒートの俺を助けてくれる人なんているのか?なにより、レイプされるのではないだろうか。などを考えると恐怖で体が震えた。頭では必死に考えて見ても体の熱は治まらない。その時、気配なくそっと近付いた相手は優しげに俺へと尋ねて来た。
「お兄ちゃん…大丈夫、ですか?」
「ひっ、く…来るなっ!お、俺に触るなっっ!」
パンッと手を振り払ってしまった。ふわりと香るのはα性の匂いだ、それがまた恐怖を誘う。項を手で隠し、睨みを効かせれば唖然とした少女は直ぐににっこりと俺を安心させるような笑みを浮かべ水筒と発情抑制剤を手渡して来た。なんだこれ、α性なのに…こんなにも優しい人を見たことがない。本当は怖くて、誰でもいいから助けて欲しくて仕方がなかった。Ω性だという事実を突き付けられ、悲しくて涙が溢れた。