第14章 運命の番(過去編)1.5
萩原に止められるが関係ねぇ…このままだと目を見開いて固まってしまった彼女はこれ以上俺達を傷付けない為に手放し兼ねないからだ。巫山戯んな、そんなことしたら何がなんでも項に噛み付いて貰う。そう思う俺に向かってふわりと笑みを零した。
「優しいですね、お二人は…」
「別に優しくねぇよ」
「いいえ、優しいですよ…」
「春枝ちゃん。俺達は春枝ちゃんだから番になりたいんだよ…君が傍にいないと、俺達廃人になって死んじゃうからね?」
「そうならない為に、まだ番候補なんですよ?それに私は未だΩ性を性欲処理や種扱いをするα性やβ性は男女問わず屑だと思っています」
そんなΩ性を助けたくて、父の会社に一般として就職したいのだと伝えられた。薬を製薬する会社を設立し、Ω性のヒートを無くすような薬を作りたい。などと真っ直ぐな目で俺達を見る。無謀だろうと誰もが思うだろう…だが彼女なら、春枝ならば成し遂げられるのではないかと思ってしまう。
「春枝ちゃんって本当、突拍子のないこととか思い付くよね…」
「あぁ、無謀な挑戦で正直驚いてる」
「と言っても私の為でもあるんですよ…母がヒートでいつも苦しめられているのを間近で見ているので、助けたいと思うんです」
それで、家族で当たり前のようにどこでも良いから…遊びに行きたい。公園でも構わない。と俺や萩原を見て笑った。
「なぁ、春枝」
「はい?」
「今度は水族館ゆっくり回ろうな」
「うん、俺は今度遊園地に行きたいかな?」
「案外観光するのもありだよな」
「もっと遠くを見て、泊りがけで旅行したい」
俺は萩原と今からどこに行くかを決めつつ計画を立てる。春枝はそんな俺達を見て、眉を落としながら言った。
「面倒なα性の女ですよ?」
「それでも俺は春枝ちゃん一緒にいたいんだよ?」
「私はお二人に嫌われるのが怖いです…」
「心配すんな、俺は春枝に既に惚れてる…嫌うことなんて先ずねぇよ」
「狡い人ですね…益々好きになっちゃうじゃないですか。本当に責任取って下さいよ?」
困ったように笑う春枝は、壁のある微笑み方ではなく愛おしげに俺達を見て年相応の柔らかい笑顔だ。
その話しを聞いた運転手もほっと息を撫で下ろし、春枝がいう爺やへと連絡していたとは俺達は気付かなかった。