第14章 運命の番(過去編)1.5
松田side。
「おはようございます、陣平さん。朝早くからごめんなさい…良く眠れましたか?」
「っ…朝から春枝の声が聞けて目が冴えた」
「お望みのモーニングコールです、どうでしょうか?」
「出来ることなら録音したかった…」
「ふふ、それじゃあ二時間程でお迎えにあがりますので…ご準備をお願いしますね?」
「あぁ、ありがとうな」
「いえいえ、それでは…また」
ツーツーと電話が切れる。携帯の画面を見れば7時過ぎで、9時頃に着く予定かとゴロリと寝返りを打った。昨日春枝の家から職場へ向かい、無理矢理有休をもぎ取って来た為、焦る必要はない。
「準備するか」
そう独り言に呟き、ベッドから降りる。無意識に鼻歌を歌っており遠足を楽しみにしている子供かと頭を抱えた。浮かれてしまうのは仕方ないにしろ、春枝の前ではクールに行かねぇとな…などを思いつつ、洗面所まで歩いて行った。
ーーー。
「おはようございます!陣平さん!」
「あ、あぁ…」
まさか家まで迎えに来てくれるとは思わなかった。というかなんで家知ってんだろうかというような視線を向ければ、ひょっこりと顔を出した萩原がいる。あぁ…なるほど。こいつか。
「おはよう、松田?」
「萩原、お前は帰れ」
「いやいや!なんでだよ!」
俺も春枝ちゃんとデートしたいっ!そう春枝に後ろから抱き着いた萩原に苛立つ。春枝の手首を掴み、こちらへと引っ張ろうとすれば後ろから抱き締める力がこもった。ニヤリと笑う萩原は相変わらず春枝へ甘えている。
「ほぉー…」
「陣平くん顔怖いよー…ねぇ、春枝ちゃん?」
「えっ、えぇーと…」
どう答えようかを迷い苦笑いを浮かべる春枝は許すとして、萩原お前は駄目だ。後でぜってぇ殴る。
ーーー。
車に乗り込み…というか高校生がリムジンってどうなんだと思うも、運転手はにこやかにドアを引いて待っていた。
「中がバーってどんな車だよ…」
「ふふ…ノンアルコールなら今出せますよ?」
「俺、リムジンとか初めて乗った」
「いや、普通乗ることとかそうそうねぇよ」
「だよなー…」
車に揺られながら春枝は楽しげにノンアルコールのカクテルを作っていて、飲みます?と手渡された為口付ける。中々美味い。そう伝えれば彼女は目を細めていた。