第14章 運命の番(過去編)1.5
「お兄さん方は夕飯まだですよね?」
「まさか…美咲ちゃんの手作り!?」
「まだ食ってねぇけど…作ってくれるのか?」
「え、えぇ…お口に合うかは分かりませんが、家まで送って貰いましたし。お礼になるかは分かりませんが…」
艶のある髪を結び、野菜を選ぶ彼女がとても綺麗で愛おしかった。肉や魚を触れて、どうしようかと考える春枝ちゃんを見ていた。すると野菜を手に持ちながらこちらへ視線を向けて来る。
「洋食、和食、中華どれがいいですか?」
「洋食」
「和食」
………はっ?松田今、和食って言ったか?などを思い俺は松田を見るが松田も眉間にシワを寄せて既に喧嘩腰でこちらを睨んで来た。へぇ…そっちがその気なら俺も絶対譲らない。
「やっぱ夕飯は和食の方がいいだろ、和食にしろ」
「俺は洋食が食いたいんだよ、洋食のほうが絶対いいって」
和食、洋食、和食、洋食、和食!洋食!そんなヒートアップする和食、洋食の口論に春枝ちゃんはあわあわしていて、我慢出来なくなったのか俺達の真ん中へ割って入るように鮭を取り出した。
「分かりました!今日は鮭にしましょう!」
「鮭…つーことは和食か?」
「うぅ。そっか…和食かー」
「いいえ?洋食、和食…両方作りますよ?」
和食かー…そっか…と少しショックを受ける俺に対してムニエルの洋風、和風を作ります。と微笑まれた。手慣れた様子で調理を開始する彼女の視線は鮭に向いており、その真剣な眼差しもまたカッコ可愛くて見蕩れてしまいそうになる。ふとまたこちらを向いた春枝ちゃんが笑顔で口を開く。
「お客様ですから、ゆっくり寛いで下さいね?」
「え、いや…手伝うよ?」
「あぁ、全部任せるのは悪いしな」
「!…お二人って、やっぱりモテるでしょう?ちょっとキュンと来ました」
きょとんとした顔をして照れくさそうに微笑む春枝ちゃんは甘いαの匂いを放つ。その匂いにクラリと来るもなんとか耐えた。よっしゃっ!と内心松田と一緒にガッツポーズをしておく。後で松田とハイタッチもしたいくらいに、いつの間にか俺達は機嫌が良かった。
ーーー。
「なんだこれ、美味過ぎるだろ…」
「うわ…めちゃくちゃうまっ!」
「お口に合ってよかったです」
「「(俺のαが有能過ぎて尊い…新妻かよ。結婚しよ)」」
気配りも出来る優秀さにツボを抉られるように胸が高鳴った。