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裏『探偵』αな女がΩの男達に求愛される話。

第14章 運命の番(過去編)1.5


春枝ちゃんがリビングへ帰って来た時は、白のトップスに淡い紫色の花柄のスカートをはいていた。高校生には見えず大人の女性らしく振る舞いふわりと笑うからドキリと心臓が五月蝿くなる。落ち着こうにも、部屋が広く弾力性のあるソファーも座り心地が良過ぎて落ち着かない。

「ふふ…やっぱり落ち着きませんか?」
「リビングの奥にグランドピアノが置いてあるがお前弾けるんだな…」
「基本的なことならなんだって出来ますよ?和洋どちらでも…気晴らしにと両親がわざわざ買って置いて帰ってしまって」
「へぇ…俺さ、美咲ちゃんのピアノ弾く姿が見たいな」
「えっ…でも夕飯の準備が」
「それは後で一緒に手伝うから!」

困り顔の春枝ちゃんの背中を押して、高低椅子へと腰掛けさせる。少し強引だっただろうか…困惑気味にグランドピアノに肘を置き、手の平に顎を乗せた俺達を見上げているため少しばかり申し訳なくも思えた。

「好きな曲とかあります?」
「うーん…春枝ちゃんのおすすめで」
「あぁ、俺も特にねぇな」
「そうですか…それじゃあ」

陶器のような白い肌、指先は薄ピンク色で細く滑らかな指がピアノへと添えられた。すると聞き覚えのある曲と共に歌うのはアメイジング・グレイスだった。透き通るような声、迫力のあるピアノの音…静かに流れていれば、春枝ちゃんの感情を溢れ出した時音が楽しげに跳ねるのだ。最初、ここまで凄いとは思っていなかったが…直ぐに納得した。きっと小さい頃から努力して、本当は逃げたくて、それでも負けず嫌いで…結局音楽が好きだったのだろう。そんな想いが、春枝ちゃんの音から届いた気がした。何曲か俺達でも知っている曲を奏でて歌ってそっとピアノを撫でながら手を下ろす。凄かった、そう手を叩く俺と松田がいればはにかむように目を細めていた。

天使かっ!可愛いかよっ!もう俺の新妻がこんなにも可愛い!そう天井を見上げて悶える俺の横で、ピアノをバンバン叩く松田の気持ちが痛いくらいに分かる。ただピアノ自体はかなり高いから壊すなよ?とまさか春枝ちゃんと同じことを考えていたとは思わなかった。

ーーー。

春枝ちゃんは本当に新妻だった。可愛らしいエプロン姿を必死に焼き付けてしんどいと内心呟いておく。料理に取り掛かる彼女は、まさか俺達の分の夕飯も作ってくれるらしい。
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