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裏『探偵』αな女がΩの男達に求愛される話。

第14章 運命の番(過去編)1.5


思い切り俺を叩いた松田のドスの効いた声にビクッと肩を揺らした春枝ちゃんがいて、怯えてるから止めろよとジト目で松田を軽く睨んだ。

ーーー。

かなり大きい高層ビルへの地下駐車場へと入って行く。えっ…待って、ここホテルだよね、家賃いくら?などと戸惑う俺達をよそに、当たり前の様子で車から降りた春枝ちゃんがいた。連れられる間に清掃の行き届いているエントランスへと招き入れられる。そこには美女が一人頭を下げて待っていた。

「お帰りなさいませ、春枝様」
「ただいま帰りました。いつもありがとうございます」
「いいえ、春枝様のお帰りを楽しみにしておりましたので…私達は貴女様の笑顔こそがなによりの喜びなのですよ」
「っ、ありがとう…あっ、そうだ。ご紹介したい方がーー…」
「萩原研二様と松田陣平様ですね。存じ上げておりますわ」
「なるほど…爺やか」
「執事長は春枝様のことを大変可愛がっておられますから…」
「あの人には隠し事は無理だね…」

照れたように頬をかいた春枝ちゃんが、楽しげに美女と話し込んでいた。それにしても春枝ちゃんって一体なにものなんだろうか…家のカードキーを受け取り、俺達のほうを向いて口を開く。

「桜花グループというのをご存知ですか?」
「確か建設業は勿論、レジャー施設を管理するグループ大企業だよな…」
「おいおい、まさか…?」
「察して頂いてありがとうございます。それで…私…桜花グループの一人娘なんですよ」
「「………」」
「………」

言っている意味は理解出来るも、思考が追い付いて来なくてしんっ…と静まり返ってしまった。コンシェルジュの美女は相変わらずニコニコしていて、ずっと営業スマイルである。いやいや…そんなまさか。そう引きつった顔で松田を見る俺に、松田も同じことを考えていたのか俺の顔を見た。そして春枝ちゃんを見て口を開く。

「「はぁっ!?鈴木グループのご令嬢!?」」
「あはは…やっぱり驚きますよねぇ」

まぁ、立ち話もなんですから部屋までどうぞ。とコンシェルジュへ軽く手を振る春枝ちゃんは俺達を連れ去るようにエレベーターへと乗り込むと最上階のボタンを押した。

ーーー。

春枝ちゃんの表情は少し暗く、過去を話す彼女はどこか遠くを見ていた。
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