第14章 運命の番(過去編)1.5
米花町から帝丹高校に近い場所を手当り次第に探して見る。その時ふわりと香るのはα特有の匂いだ…Ωとはまた別の甘い匂い。そして神々しいのか、βである一般人は圧倒されるように一歩後ろに下がってしまうようだ。スーパーから出て来たのに、袋を手に持つ姿すら可愛いとかなんなんだろう…新妻かな?
松田もハンドルに頭を押し当てて悶えている、気持ちめちゃくちゃ分かるわ。軽くクラクションを鳴らす松田の車はかなり目立ったけれど気付いて貰えるなら、という想いが俺にも伝わった。ドアガラスを下へ下げて余裕のある大人を演じて見せるも、内心良かった…嫌われてなかった。とブレブレであった。
「お二人は暇なんですか?」
本当に仲がいいですね。と含まれるような言葉に、春枝ちゃんを探して来たのに酷い言われようだと少しグサリと来る。しかしそれ以上に俺は春枝ちゃんに会いたくて勢いよく降りるようにドアを開け、彼女の前に立った。抱き締めたい衝動に駆られるが人通りの多い道で抱き着くのはどうなんだろうかと手を止める。なにより後ろで松田が手錠を片手に睨んでいるのが想像出来たためなんとか耐えた。
「春枝ちゃん、聞きたいんだけど…」
「はい、なんでしょう?」
「家、携帯とか…」
「あぁ…ごめんなさい。折角会いに来て下さったのに…いきなり物とかなくて驚きましたよね。両親が過保護過ぎるからもっとセキュリティのいいマンションへ引っ越すように言われたんですよ」
「そうなんだ…じゃあ携帯は?連絡付かなかったんだけど…」
面倒な恋人だろう。彼女にだって忙しい理由がきっとあっただろうが…俺は自分自身が安心したいがために根掘り葉掘り質問してしまっていた。逃がさないようにスーパーで買った食材の入った袋をするりと持つと、松田の車へと入れた。反対側の後部座席を開けてどうぞと手招きするように笑う。春枝ちゃんは目を瞬きさせて、苦笑い気味に後部座席へ乗ってくれた。乗って貰ったらこっちのものだとちょこんと腰掛けている春枝ちゃんが本当に可愛くて語彙力が低下する。可愛い…好き。
「明日は非番だから美咲ちゃん構って?」
「俺は萩原がまたお前を襲う可能性があるから見張りで来た」
「美咲ちゃんが本当に嫌がることはしねぇよ!というか、素直に会いたかったくらい言えよな!」
「うるせぇよ」
「いったぁっ!」