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裏『探偵』αな女がΩの男達に求愛される話。

第14章 運命の番(過去編)1.5


俺に依存すればいい、俺だけを愛せばいい、そんなことを思う俺に真っ直ぐと澄んだ瞳をした彼女は口を開いた。余りにも綺麗な目で俺を見上げて来るから、目を丸くして狼狽えてしまう。

「責任はとりますし、研二さんを必ず幸せにして見せます」
「…んだよ、それ」
「えっ…」
「だったら俺も幸せにしろ。萩原だけが運命だなんて思うな…俺もアンタの運命なんだよ」

巫山戯んな、巫山戯んな、巫山戯んな。俺はβだ、俺はβだったんだ…ここ最近までは。なのにアンタに出会って運命だと感じた。そしてΩになってしまった。そこに憎しみはあるが怒りはない。だが…萩原を幸せにすると面と向かって言われたその言葉は、心臓が握り潰されるように痛んだ。なんで俺じゃねぇんだよ、なんで俺も幸せにしてくれねぇんだよ。ぜってぇ逃がしてやらねぇ…

「…つ、番候補で手を打って貰えないでしょうか?」
「番候補だぁ?」
「研二さんにもいったんです。今は番にさせられないと…私がまだ未成年というのもありますけど、養えるくらいに落ち着くまでは番候補でお願いしたいと伝えたんです」
「だがそこは萩原が稼げばなんの問題も…」
「いいえ。全部私のプライドの問題なんです。私の番になるのなら誰よりもなによりも幸せにしてあげたいじゃないですか…私の元に嫁いで良かったと思えるくらい沢山愛したいんです。まぁ…ただの自己満足かも知れませんが」

幸せにしたい。愛したい。その言葉にぐっと口を閉ざした。羨ましい、俺もそれくらい愛されたいとそう願ってしまう。腹立たしいくらいスッキリした答えに頭をグシャグシャと乱暴にかいた。

「分かった、その番候補で手を打ってやるよ」
「松田さん…っ!」
「陣平」
「へっ?」
「萩原のことは名前で呼んで、俺は名字なのは不公平だろ…それに俺も春枝と呼ばせて貰うからな」

戸惑う彼女は目を見開くと直ぐに苦笑いを浮かべた。そんな彼女…春枝を見下ろしてくしゃくしゃと優しく頭を撫で回して笑えば、じわじわと顔を赤くした春枝が最高に可愛いかよ。αの匂いがまた香って来てムラムラしたのはなんとか耐えた。

ーーー。

「春枝の番候補になったから、宜しくな…先輩?」
「松田…どういうことだ」

ぐしゃりと飲み干した珈琲の空き缶を握り潰した萩原に、不適切な笑みを見せた俺がいてカンッと脳内でゴングが鳴った。
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