第14章 運命の番(過去編)1.5
松田side。
βだった俺が一人の女に翻弄され、後天性のΩになるなんて誰が想像出来ただろうか。
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萩原の様子が可笑しくなってから、俺自身も可笑しくなった。身体が重くて怠いのだ。妙に熱っぽく仕事も捗らない為病院へ行こうと足を進めるーー…そして医者から言われたのは衝撃的で余りにもショックだった。βから後天性のΩになってしまったのだ。まさか…この俺が?いや…そんな馬鹿な。そう思いたいのに思い出すのは萩原からαの匂いがして…その匂いは俺も嗅いだことのある匂いであり、あの時に一瞬目が合った少女の香りだった。思い出すと、胸が苦しくなる。動悸や息切れ、目眩などを引き起こす…有り得ない。有り得ないだろう。少し前に「好きだった女の子になんとか番候補にして貰えた!」と大喜びする萩原へロリコンだろとか、未成年になに考えてんだとか、逮捕しねぇといけないな。なんて笑っていったばかりだというのに…あの少女と萩原が仲良く会っていることを考えれば、嫉妬で気が狂いそうになった。
「巫山戯んな…絶対俺が番になる」
そう薬を受け取り、嫉妬に燃える俺はアイツに会うことを心に決めた。
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久しぶりに出逢えた俺は運命なのか、あの女からすれば不運なのか、見知らぬ男にナンパされていた。あそこまで美少女だと男は勿論、女でさえも放っておけないだろうなと男へ声を掛ける。驚くように俺を見上げた少女にゾクゾクする、しかし発情抑制剤を飲んで来た俺は気持ちを昂らせるが、なんとか抑えることが出来た。
「嫌がってんだろ、いい加減諦めて出直しな」
「あぁ゙?別にアンタには関係ねぇだろうが…」
「関係あるぜ、そこの女とは知り合いだ」
「知り合いでも付き合ってねぇんだろ?俺の邪魔すんなよ」
俺の胸ぐらを掴もうとする男を振り払い、手首を掴むと背中へ回し逆に抑え込む。痛がる男を見下ろしてニタリと笑った。
「公務執行妨害で逮捕するぞ?」
「えっ…アンタ、まさかっ!」
「警察官ですが、なにか?」
「ひっ!し、失礼しましたっ!」
ぱっと手を離した俺へ逃げるようにいなくなったナンパ野郎をしっかり走り去っていくことを確認した。というか、あんなので公務執行妨害として犯人を捕まえていたら、この犯罪率の高い米花町はほとんどの人が捕まり牢屋行きだろうなと思ったが頭から消した。
「あのっ…助けて頂いてありがとうございます」