第12章 運命の番(3)…緑川景光>>2
「カッコイイですね、よく似合いますっ…それじゃあ…こちらとか?ウェリントン型も似合うと思うんですけど…」
レンズの形が四角で横長の長方形のスクエア型を外され、次に茶色のウェリントン型と呼ばれる丸みを帯びた逆台形型で、正方形に近いフレームを装着させられた。じっくり舐め回すように見つめられて、鏡には欲を孕み潤んだ目をする俺が映り込む。羞恥プレイが上級者向け過ぎはしないか?俺現役警察官なんだけどっっ!そう春枝に助けを求める視線を向けるが、流石はゼロが後々教えて貰ったあのベルモットから直接教わったとされる演技力である。全く反応がない、寧ろきょとんと軽く首を傾げているだけだった。可愛いけどっ!可愛いけどっ!
「ぁっ…はぁ、ぅ…ぅっ」
「光さん、大丈夫ですか?顔真っ赤ですよ?」
俺の異変に周りにいる店員や客までもがザワザワし始めてゾッと血の気が引いて行く。しかし機械的に動きを止めない電動エネマグラに悶えてしまい、ズルズルと座り込んでしまいそうになった。しかし寸止めのところで春枝が抱き支えてくれて、カチッと電源を止められる。止まった…そうどっとした汗をかいて、熱に侵されたような吐息を漏らす。必死に呼吸を整えて、春枝を見上げ口を開いた。
「んっ…だい、じょうぶ、だっ」
「無理はいけませんよ…少し、休憩しましょうか?眼鏡は似合っていた2つともプレゼントさせて下さい」
そう心配するように顔を覗かせた春枝の瞳が反らせられなかった。俺の潤んだ熱っぽい顔や声で女性達は顔を赤く色付かせ小さく悲鳴を上げている。目の前で春枝は俺の頬を撫でてから、腰に手を回して支えられる。その表情は優しげだったが、酷く艶めかしくαフェロモンを出していた為当てられる店員や客も大勢いた。店を出ると「美男美女カップルがかなり目の保養で、ヒートだったのかΩの彼氏さんが可愛くてαの彼女さんが心配するように周りへ牽制する姿とかカッコよくて素敵だった」とその話題で持ち切りだったようだが、俺や春枝は出て行った後の話しなので知るはずもなかった。
「ふふっ…楽しかったですね?」
「俺は寿命が縮まるかと思った…」
「それでも興奮してたくせに…」
「うっ…」
興奮していた、確かにその通りだ。店員や客に気付かれたらと思うと恥ずかしいのに無意識に締め付けてしまっていた。