第9章 運命の番(過去編)4
っ…と全員が息を呑む。ちゃぽり…とペットボトルから口を離し、ガン見していたのを気付いたのか周りと視線がかち合った。春枝は照れながら口を開く。
「寝起きなので…あ、余りじっくり見ないで下さい。えっと…皆さんも水飲みます?」
がわ゙い゙い゙ぃ゙ぃ゙!!!
えっ?水のCMか?そこいらにいる女優よりも可愛い春枝のはにかむ表情に顔を伏せて悶えた。
ーーー。
「今週の土曜日なんですけど…皆さんにお願いがあるんです」
「お願い?」
「私の両親に会って貰えませんか?」
ガンッと鈍器で殴られたような衝撃を受ける。両親?春枝の両親?未だ全員が誰も会ったことのない、桜花グループの現社長とその妻のことだ。表には出ず、だが名前だけなら知らない人はいないとされる桜花社長…気難しく曲者で、自分に厳しく他人にも厳しいという印象がある。そんな人柄らしい。
「…すまない。仕事がある」
「悪いな…俺もだ」
「公安なら仕方ねぇか…と行っても俺も仕事だけどな」
「俺非番だし行けるよ?なんなら俺一人でもいいけど…」
「「「あ゙?」」」
「こわっ…冗談だって!」
公安二人は案の定忙しい、陣平は爆発物処理班から異動して捜査一課になり毎日犯罪が絶えず忙しい様子。研二だって今は爆発物処理班に所属しているが、この犯罪率だ。直ぐに現場へと呼ばれる可能性が高い。寧ろ彼も捜査一課に異動させられるだろうと考えられた。私は思い出す、流石は日本のヨハネスブルグだと…なにより私自身も体験する犯罪率の高さ。殺人や強盗、爆発テロなど普通に生きていたら出会わないのに、この世界だと日常茶飯事に起こりうる出来事なのだ。
「やっぱり、そうですよね…いきなりじゃ時間も取れませんし」
「春枝ちゃん、俺は行けるよ?」
「研二さんだって暇じゃないでしょう。うん…分かりました。両親には忙しくて行けないことを伝えておきます」
「いいのか?」
「両親は私に振り回されるの慣れていますから…大丈夫ですよ」
寧ろ威厳のある父がデレデレに甘やかして「春枝のその人を振り回すところとかは父さんの俺に似たんだろうな…恥ずかしがるところは母さん似で、やっぱり俺の娘は世界、いや…宇宙一可愛い。まだどこの誰か分からない番の嫁に行くなよ?」と幼少期から今までずっとこの調子だったりする。