第9章 運命の番(過去編)4
「いやいや!緑川!依存は駄目だろ!」
「相変わらず一番極端なことを平気でいうな…」
「だが、最終目的はそこだろ…緑川は間違ってねぇと俺は思うぜ」
「いや、まぁ…確かにそうだが」
春枝はαの頂点だ。かなり濃いαのフェロモンを持っている、カリスマ性のあるイケメンで負けず嫌いで、努力家で、優しく穏やか…怒る時も少し呆れたように笑って許してくれる器の大きい人。茶目っ気や少し悪戯好きで俺達を喜ばせる天才だと思う。そんな彼女を好印象として慕う人は多い、Ωにとって春枝は憧れの存在で番になりたいと願う。βにとってはαなのに気取った態度を取らない優しい人だとか。Ωだったら春枝の番になれたのにと落胆する人も多い。αは彼女のフェロモンに勝てないのが分かるのか、ライバル意識は持てず寧ろ神を崇拝するが如く愛すのだ。
そんな春枝は俺達の運命であるし、決して裏切らないことも十二分に分かっているつもりではあるが…やはり依存するくらいに離れないでもっと奥深くまで愛して欲しいと思う。分け隔てなく愛してくれるのも嬉しい、だがやはり誰よりもなによりも特別扱いをして欲しいと考えてしまうのも事実で、現にここにいる皆がそう思っていたりする。
「曜日を決めて会いに来るというのはどうだろう?」
「例えば春枝をシェアするのなら月火水木を一人で堪能して周りは絶対に邪魔はしないように義務付ける。金はゆっくりしたいだろうから一人の時間を作って貰って…土日は二人で必ず交代でデートとか…?」
「ーー…それだと皆さんと仲良く話しが出来なくて私が寂しいので却下でお願いしますね?」
「!、春枝っ!い、いつからいたんだ…?」
「つい先程ですよ、皆さんが私をシェアするとか聞こえて来たので…まぁ。私をシェアするのは一向に構いませんよ?私も零さんや景光さん、陣平さんや研二さんのことをたくさん独占したいので…」
リビングに顔を出した春枝は、ドレスを脱いで既に普段着であり白のワイシャツに黒のロングタイトスカート姿に、俺の番は毎日可愛い。そう全力で推した。冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り出して口に含み飲む姿とかセクシーで、口元から伝う水が首筋を流れて行くところとか見てはいけないものに見える。すっきりするように唇を舐めとる姿とかエロくて目が離せなくなってしまった。