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裏『探偵』αな女がΩの男達に求愛される話。

第9章 運命の番(過去編)4


春枝は基本弱さを見せない。負けず嫌いなところがあるし、αだからもっとしっかりして頑張らないと、とか。αだから誰かに頼るなんてことは出来ない、とか。そういうのがいつも春枝の中に渦巻いている。その知識を幼少期から教え込まれて来たから、それが当たり前なのだと認識してしまっていた。

その弱音をはく捌け口があればいいのだが、いかんせん春枝は未だに少しばかりの抵抗なのか、仲は悪くはないが両親と距離を置いているし…番である俺達には心配かけまいと愚痴や弱音をこぼすことはなかった。寧ろ仕事で疲れた俺達に笑い掛けてお帰りなさい、お疲れ様です。と言い癒すように聞き手へと回ってくれていて、いつの間にかこちらが愚痴をこぼしていた時は、一体なにをやっているのだろうかと内心頭を抱えた。

数年前、景光がNOCバレした日も、バブみEXで心が擦り切れていた景光を優しく癒し、結果的に滑らせるように公安や組織の話しを聞き出していた。景光曰く彼女の柔らかく落ち着きのある声掛けや親身になってくれる尋問は、かなり刑事に向いていると言っていたが、もしかするとそうなのかも知れないなと零は目を閉じる。逆に春枝のような優秀過ぎる人間が、組織側じゃなくて良かったとも思う。ベルモットと知り合いだと聞いた時は本当に血の気が引いた、もしも俺と春枝が知り合いだと気付いていて、春枝が無意識に公安の人間だと伝えていたらーー…だが彼女は口が堅い。約束も律儀に守る人だ。察してくれる鋭さもある、だからその心配はしていなかったりするが彼女の魅了を肌で感じているベルモット、組織の幹部がいるというのは…春枝にもしものことがあったら。それだけが気がかりだった。

ふと研二は思い返すように口を開く。

「春枝ちゃんさ…降谷から音信不通になって、その時くらいから俺と松田が知り合いになったんだけど雰囲気が高校生には見えなかったんだよな」
「……」
「あぁ、別に見た目は高校生だったけどさ…ただ高校生にしては随分大人びて落ち着いていたというか。笑い方も微笑むって感じで心の底から笑った顔とか見たことがないんだよね」
「言われて見ればそうだな…」

研二の言葉に陣平も納得するように頷き口を開いた。

「あいつ、初めて目の前で泣いたんだ…我慢しながら泣き顔を見られるのを嫌がって」
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