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裏『探偵』αな女がΩの男達に求愛される話。

第9章 運命の番(過去編)4


「随分軽率なナンパですね?」
「あはは…」
「でもお兄さん可愛いからその軽いナンパに乗って見るのもありですね…是非ともお願い致します」

運転席から降りて、助手席のドアを開けた安室透はスマートにリードする。私は車に乗り込み、ゆったりと過ぎていく外を眺めた。道路を走る車…私は安室透を見上げてぽつりと呟く。

「ベルは良かったの?」
「、一体なんのことでしょう…僕にはさっぱり」
「いや、逆か…ベルに頼まれた感じですかね?偶然にしては余りにも出来すぎてますから…だって私はベルと会う店を父や爺や以外には伝えていませんからね。ここまで偶然に装って現れるのは無理ですよ…」

ニコニコと人当たりのよい笑みを浮かべていたが、私はそっと色素の薄い金色の髪を撫でて見た。ぶわりと体に絡み付くΩの香りが車の中で充満し、ゾクゾクと感情が昂り身震いした。じわじわと火照ったような顔をして私に尋ねる安室透はもういない、私の隣には赤くなりながらも私を心配する降谷零、私の愛する番、その人がいた。

「……怪我は、ないのか」
「ベルは私に対して過保護ですから、怪我はありませんよ…」
「っ、君は知っていたのか…?彼女が組織の人間だと。なのにどうして会いに行ったんだっ!」
「ベルは私の第二の母ですから…全部ベルのおかげで今の私がいるんです、零さんはこんな私は嫌いですか?」

私はなんて意地悪な言い方しか出来ないのだろうかと思う。付き合いとしては零さんが一番長いのだ、昔からの私を知っている零さんが今の私を否定するなんて出来るわけがないし、ましてや嫌いだなんて口が裂けてもいえないだろう。

「っっ…好きに決まっているじゃないか、だから身を削る思いでお前を心配したんだ」
「大丈夫ですよ。あの人は私自身のことを崇拝するかの如く愛してくれていますので…それに零さん達を置いて私は死ねませんから」

といっても一人が欠けたら私の心は死ぬだろう。同じ道を辿るのは目に見えていた、だから絶対に死なせないし、死なないでと切望する。

「ふぅ。春枝、家まで送る」
「零さんちょっと詰め込み過ぎじゃないですか、クマ出来てますよ?」
「気のせいだ、それに周りも寝る間も惜しんで働いているのに俺だけが休憩しているわけには…」
「零さん、今日で徹夜何日目になります?」
「…っ」
「答えないと私の家を出禁にします」
「……み、三日だ」
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